◎ 1
「そうだ会長。またあの幼馴染の依頼解決したんだって?」
数日後の立海の生徒会室。気だるげに椅子にもたれ、携帯をいじっていた滝亜は何かを思い出したように書類に目を通していた御杞に聞いた。
御杞は表情一つ変えずに誰から聞いたと聞き返した。
滝亜は菊丸と答え、御杞は動かしていた手を止めた。
「どうして菊丸くん?」
「ああ、前にばったり出会って煩いもんだから連絡先交換したんだよ。」
煩いという理由で連絡先を交換するのだろうかと思った御杞だが、
そこは敢えて何も言わなかった。
滝亜の交友関係にまで口出しはしない。
というかなぜ菊丸がと思ったが大方手塚が大石に連絡して菊丸が気になって聞いたのだろう。
「なんだかんだ言って、アイツには本当に弱いな。」
「それは貴方もでしょう?鳳くんに弱いくせに」
クスリと笑いながら御杞が言えば滝亜はいじっていた携帯を閉じなんでわかるという顔をした。
それに答えるかのように御杞は続けた。
「普段携帯を使わない貴方がそんなに使う時と言えば鳳くんと何等かのやり取りをしている時だけです。」
目を細めさらに右目を細めた。それを見て滝亜はため息をついた。
大概の事は見抜かれてしまうから隠し通す事は諦めていたのだがまあ簡単に見抜かれたとは、
「なんか、同じ部活の先輩の様子がおかしいって相談されてんだよ。」
「あら、という事は」
「あの鈴が鳴ったらしい。そしてあの禍々しい気配を感じたそうだ。」
そう滝亜が言った瞬間御杞の表情が変わった。
やはりあの気配は移動している。それもまるで自分達をおびき出そうとしているように。
「なんなんでしょうね。」
「さあな。でも、気になるから今度の休みに話を聞きには言ってくる。」
「素直に教えてくれると良いですけどね。その鳳くんの先輩さんが。」
「無理だろうな。まあ、最悪の場合は手荒になるな。」
「手荒というより、脅すか、何か起こるまで放置するだけでしょう?」
人の悪い笑みを浮かべる御杞に滝亜はなにも言わなかった。
遠からずともあたっているから。
「まあ、俺もお人よし、じゃねえんだよ。長太郎と違ってな。」
席を立ち、生徒会室を出て行く滝亜。
「滝亜、吸うなら吸うで構いませんが、教師に見つからないように。」
「わかってる。」
出て行った滝亜を、やれやれと言った顔で御杞は見送った。
そして、ポツリと呟いた。
「件の気配が良からぬモノであるのに変わりはありませんが。それがなんなのか掴めない。
厄介ですね。本当に。
しかも巻き込まれるのは決まってテニス部。
なんらかの関係があると考えてもいいですがそれがなんなのかすらわからない。」
ため息をついて、
「コレが原因でよからぬモノが動き出さなければいいのですが。」
そう言うと同時にシャリンとあの鈴が鳴った。
――――to be continue
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