とある生徒会長の怪奇談 | ナノ
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惨殺された男達の死体が見つかってから数日がたった。
新聞ではその異常性から連日騒いでいた。なにせ、数十回も刺されていたのだ。
怨恨という手は世間を賑わすのに最もいいネタで、男達が今までしてきた事をメディアは取り上げていた。

犯人に同情すべきか、被害者に同情すべきか。
まあ普通は被害者なのだが、被害者がやってきた事を考えるとそうも言えなかった。
被害者の自宅から押収されたパソコンには多くの女性への暴行現場の映像が残されていて、
それがネット上に流れている事も突き止められた。

でも、男達を殺した犯人は未だに捕まっていない。
手がかりがなに一つないのだ。


「そうですか。そんなにも。」


「ああ。御杞君の言った通り、被害者の多くはそのまま泣き寝入りしている。
そして、調べて欲しいといった女性だが、山中で死体が見つかったよ。

……酷い、状態だった。」


立海大附属中の応接室。御杞が対面していたのは背広を着る一人の男。
あの時御杞が電話した相手であり、今回の事件の捜査をしている刑事であり御杞の父、晴夜(せいや)の親友の紺野日向(こんの ひなた)。

そして、犯人が人ならざるモノで、この世にはいない事を知っている、一人。


「しかし、本当かい?人ならざるモノが、彼等を」


「断定はできません。でも、それが関わっている事は事実です。
彼女の憎しみはそう簡単に祓えるモノではありませんでしたから。」


そう言いながら思い出すのは這い出てきそうな女を止めたあの時の事。
札ごしではあったが、あの女がその命を奪われる瞬間の事を見た。
目を覆いたくなるような、事。あそこに居たのが自分一人だったならもう目を覆い、
女を昔の時の様に無理矢理にでも祓っていたかもしれない。

なにより、男達の事を目の前の男に言う事もなかった。
こうも早く発見される事はなかっただろう。彼等が流した噂のせいで誰も近寄ろうとしない場所であるから。
日向も言っていた御杞の電話がなければ気づかなかったと。

故に通報者である御杞が疑われる、という事を滝亜や柳達は心配していたが
御杞が情報提供した事は捜査本部には内緒であり、日向だけが知っていて、
他の者は別の人物が通報してきたと思っている。


「上司は信じないだろうから言わないが、犯人が見つからない、と覚悟はしておくよ。」


人ならざるモノ、死人が犯人ならば捕まえる事は不可能。
それを知らずに捜査している同僚に日向は悪いと思っていたが今回の事は説明できない事だからずっと黙っている事にしたのだ。


「……それから御杞君。あまり気にしない事だ。
何を見たかは聞かないが、辛いのなら誰かに話した方がいい。

俺なら大概の事には慣れているからな。」


「いえ、紺野さんに話すような事ではありませんから。」


「晴夜が心配していたぞ。この事件の後から様子が変だって。」


「大丈夫です。」


そう笑う御杞を見て日向は開きかけた口を閉じた。







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