とある生徒会長の怪奇談 | ナノ
 1




それは日も暮れ始めた夕方の事。テスト期間で部活が禁止されていたから部活もできずに帰宅するだけだった。
最初は自主練でもと思ったがそれで成績が下がっては意味がない。
しょうがないと諦めて図書館で勉強をして、帰る所だった。
学校の中は静かでほとんどの生徒が帰った事を示していた。
いつもはまだ賑わっている時間なのだが、それが信じられない程だった。

そんな廊下を歩き昇降口に向かう。
歩いて、一瞬窓の外を見て、足を止めた。
女がいたような気がした。
この学校の生徒ではなかった。風貌が違ったのだ。
制服を着ておらず赤いワンピースを着ていた。
その出で立ちから生徒だけでなく教師の目に止まるはずだ。でも誰も気づいていないように、思えた。
目をこすりもう一度その女が居た場所を見る。

するとそこに女はいなかった。


「え、あれ。」


急にいなくなる、という事はありえない。でも、女はいなかった。
幽霊という言葉が頭によぎる。その考えにいたり頭を振り昇降口に向かう。
その足は心なしか速くなっている。
まあ先ほどの光景を見たのだから仕方ないだろうが。


「なんだったんだろう。」


下駄箱について、もう一度女の事を思いだす。
俗にいう幽霊を見るのはこれが初めてだった。でもいると思っていたから驚きはしなかったけれど、でも少しだけ怖い。

忘れようと思い、外に出でて目を見開いた。そこにあの女がいた。
赤いワンピースを着た、黒い髪の女。俯いていて表情は見えないけれど、
でも人ではないと直感でわかった。


「っ!!」


目の前にいる。逃げれない。どうすればいい。
混乱する中で、知り合いから渡された物を思い出す。
嫌な気配を感じる人ならざるものに会った時にこれを使えと言われたのを。
入れてあったはずだと思い、鞄の中を探りそれを出す。
お守りのような物。でもそれには鈴のような物がつけられていた。
それを持った瞬間、シャリンという音がした。


それはこの鈴の音。いつもは鳴らない鈴が鳴った。


女に再び目を向けたら姿はなかった。一瞬の出来事。
あの女は人、なのかそうではないのかわからない。けど、あれは一体どうしてここに居たのだろう。
まるで。誰かを待っているように見えて。
お守りに目を落とした時、後ろから声をかけられる。
その声は聴きなれた尊敬する先輩の声。振り返れば、案の定想像した人物がいた。


「どうしたんだよ、こんな所で。お前も帰りか?」


「は、はい。」


幽霊を見た。なんて言えるはずもない。あの女が幽霊であるか確証はなかったし、
勘違いであるかもしれないから。
途中まで一緒に帰るかと言われ頷き、校門へと向かう。


そんな二人を見る人ではない影が一つ。赤い服を着る女はニイッと笑っていた。
笑って二人の後を追う。







姿はないのにペタペタという足音だけが響いていた。








prev|next

[目次]

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -