◎ 1
廃病院での出来事から数日後の生徒会室。御杞は柳と柳生に今回の事について説明していた。
そうなったのはつい先ほどの事。
その日の授業を終え、生徒会室へと入り机の上のプリントを一つにまとめていると柳と柳生が入ってきた。
柳生に時間は大丈夫かと尋ねられ大丈夫だと頷けば、柳生に頭を下げられた。
「……あの、話がみえないのですが。」
「今回の仁王くん達の事です。」
「ああ。貴方が謝る事はありませんよ、柳生くん。」
「いえ、前に仁王くんが。」
「貴方に変装していた事は、練習の一環と思っているので気にしていませんよ。
まあ、今度変装して私の前に現れたら容赦なく頭を叩いてやりますけどね。」
ふふと笑う御杞。冗談かと思ったが目が本気だった。
これは彼女の前ではもうしないようにと言わなければと柳生は思った。
「伝えておきます。」
「仁王が柳生に変装して鳳凰寺の前に現れる確率は高いからな。
早めに言っておいた方がいいだろう。
それより、」
「今回の件についてですか?」
「ああ。」
柳が頷けば御杞は引出を開け、数枚のプリントを取り出す。
一枚はあの病院。残りは新聞記事のコピーだった。
手術ミス!!患者は神経を損傷!!
医師を解雇。
患者が行方不明。死亡か?
医師首吊り自殺。病室で発見
怪奇!変死死体発見
共通しているのはあの病院の医師と患者。そして院長の息子。
「滝亜が祓っているときに貴方達が見たのはこの医師と患者が合っている所。
そしてそれを妬ましげに見ていたのがこの息子です。」
「……」
記事を読む二人。真相を知らない記者によって書かれた記事。
医師を批判するモノが圧倒的に多い。真相を知ったから見るのも嫌になる。
医師がミスをしたのではなく、あの男が意図的に怪我をさせたから。
そして女は行方不明になったのではなく、あの男がその遺体を焼却炉へと入れたのだ。
男、院長の、息子。変死した男。
「息子の死の原因は定かではありません。科学的には解明できなかった。」
「まさか、あの二人が。」
「かもしれませんし違うかもしれません。今ではもう確かめる術はありませんから。」
そうだ。変死した院長の息子は火葬されたし、解剖も今よりは劣っている。
真相を知る者ならば二人の怨念が殺した、と言うだろうし。
何も知らない者は違うと、毒物かもしれないと言うかもしれない。
今の自分達には確かめる術は全くないから、両方共否定できないし肯定もできない。
プリントを返し。不思議ですねと柳生は呟いた。
「そうだ。どうですか?切原くんの調子は」
「よくなったな。今までで一番調子がいい。」
「丸井くんと、仁王くんも。」
「そうですか。」
それはよかったと御杞が笑みを浮かべた時、生徒会室のドアが勢いよく開き、鳳凰寺先輩!!と赤也が入ってきた。
ノックをしたまえと柳生が注意すればすんませんと慌てて謝る。
「かまいませんよ。それよりどうしたんですか?」
「ばーちゃんに聞いて来きたっす!そしたらやっぱりばーちゃんのねーちゃんがあの病院に入院していて、」
「そうですか。やっぱり。」
納得しましたと頷く御杞。柳がどういう意味だと聞いた。
「…そうですね。説明しますよ、と言いたいですが。もうそろそろ練習が始まる時間ですよね?
歩きながら説明します。」
生徒会室の鍵を手に取り、立った。
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