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都内某所にある氷帝学園。
その音楽室に青学、氷帝、立海。三校のテニス部部長が勢揃いしていた。
本当ならここにもう一人居て欲しいのだが距離の問題でそれはなくなった。

ともかくそんな事情は置いておいて、その三人の中の一人がプリントを見ながら、表情を崩さずにでも驚きを含ませながら言った。


「合同合宿、ですか」


「ああ。青学、氷帝、立海、四天宝寺、そして漆世学園の五校で行う。」


「漆世、学園?」


見知る学校ばかりであったのだが、一つは全く知らない聞いたことのない学校。
大会でも聞いた事のない所謂無名校。強いのかすらわからない学校。
それなのに強豪校と一緒の合宿など大丈夫なのだろうか。


「四校はわかりますが、その漆世はどんなところなんですか?」


立海大附属中テニス部部長、幸村精市がプリントから目を榊へと向ける。
どんなとは即ち強いかということ。
榊なら隠す事なく教えてくれるだろうと踏んだのだろう。
しかし、榊は珍しく考え、そして


「それは答える事は出来ない。」


「?それはどういう」


氷帝学園テニス部部長、跡部景吾が珍しく答えない榊に聞くが榊は遮り言った。


「実際に会えばわかることだ。」


それ以上は答えないというように行ってよしと馴染みのポーズをした。
それを見て顔を見合わせる三人。
実力を言わず、会えばわかると。榊がそう言うのは珍しかった。
彼は実力を重視するタイプであるから弱かったら合宿などに招かないはず。
でも実際は強豪校の合宿に無名校を招いた。
ということは自分達と対等に試合をする実力はある、ということなのだろう。

そう結論付け、失礼しましたと音楽室を後にした。
三人が居なくなった後、榊は一人言った。


「彼等の、いや彼女達は未知数なのだよ。」


そう呟き、ピアノの上に置かれた一枚の便箋を手に取る。
日本語ではなくフランス語で書かれた便箋を。


その頃音楽室を後にした手塚達。話題は合宿に参加する無名校の事。
聞いた事のない学校が参加する事は彼等に取って驚きなのだろう。


「しかし不思議だな。監督が無名校を合宿に招待するなんてよ。」


「そうだね。珍しいよね。実力主義な彼が。」


プリントに印刷された漆世学園の名。
こんな機会でなければ聞く事がなかったであろ名。


「手塚はどう思う?」


「何か考えがあっての事だろう。それに合宿先は漆世学園だ。
それなりに強いのだろう。」


「そうだといいがな」


合宿先となっているのは漆世。ならば主催校は漆世なのだろう。
ではなぜ、自分達にというのが彼等の本音だ。
別に自分達でなくてもと思うものだって出てくる。

彼等の真意が全くわからない。


「問題は他のレギュラー達だよね。漆世をどう思うか。」


「フン。どう言おうが合宿に参加するのは決定事項なんだ。
今更どうこう言ってもどうにも出来ねぇだろ。」


三人はそういいながらも、心の奥底で感じ取っていた。
この合宿で何かが起こると。
何故かは知らないけれど、感じ取っていた。



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