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漆世学園は多くの謎に包まれている。
なぜあのような人里から離れた地に建てられたのか、
なぜ他校との交流を拒むのか、
なぜ、持つ者と呼ばれる者を置いたのか。

そしてなにより創立者の名がわかっていないこと。
歴史の長い学園はあるがどの学園も創立者の名などわかっているのに、
漆世学園は創立者すらもわかっていない。
ただ一つだけわかっているのは、創立者が当時では珍しく女であったことだけ。
女の創立者はいるが、それらの多くは女子校となっているなかで、漆世は最初から男女共学のエスカレーター式の高等教育を行って来た。
それはまるで欧州にある、有名なる学園都市内にある学校と同じであった。
おそらくはそれを倣っての事なのだろう。


ではその他の謎については?
人里から離れた地に学園を建てたのは龍閃華学園と同じといえる。
かの学園は入学する者を選ぶが故にあの地に建てられたのもわからなくはない。
しかし漆世学園は違う。
他の私学と同じように入学者を募集し試験を行う。
だからこそわからない。交通の不便なあの地に建てたのかが。
何か意図があったとしても、建てる場所を選ぶ筈だ。


それが分かれば、他校との交流を拒む理由がわかるかもしれない。
立地の条件から交流しにくいのはわかる。
でもそれは意図的なものに思えて仕方ない。
漆世学園に入学する者のほとんどが他校との交流を望んでいないのだ。
中にはいるがそれは少数と、数えられる程度と言っていい。
それほど迄に片寄っているのだ。

交流を拒むと言っても入学する生徒の大半は小学生の頃に不登校などの問題はない。
そういう風潮なのかもしれないが、この学園はそれが顕著に出ている。
その点を除けば彼等には問題ない。


一番の問題は、持つ者と呼ばれる7人の生徒達だ。

何故持つ者と呼ばれる者が現れた、いや呼ばれる者を定めたのか全く不明だ。
そう、いつ出来たのかさえも。


謎多き漆世において触れる事が禁じられている謎とも言える。
なぜならこれは漆世の核心に迫る物で、あると考えられているため望んで首を突っ込む者はいない。
だからわかっている事は極僅かである。
持つ者は其々持つ元と言われる物、
傲慢、嫉妬、憤怒、怠惰、強欲、暴食、色欲の七つの大罪にあたる物を持つと言われている。
性格行動ともにその大罪に当てはまる者が持つ者とされており、
時には欠番が出る事が多く全員揃うことは少ない。

故に7人揃った時、漆世は異端な学園となる。
以前に全員揃ったのは50年以上前の時、そして今。

テニス部に所属し、レギュラーを勝ち得た男子5人と特例で男子大会への出場が認められレギュラーとなった女子2人。
奇しくも、学園に置いて唯一と言って良いほど外と多く交流しているテニス部に、

外との交流を禁じている持つ者が揃う形となってしまったのだ。


もしも持つ者であるレギュラー達が他校との試合という事になれば、
他校の選手が、どうなるかは想像するしかない。
最悪の場合の事を考えなければならないだろう。


何故なら彼等全員、他人を潰す事に躊躇いなど持っていないのだから。













異端の事柄
(あるてちょうのなか)

 



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