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跡部達によって持ち込まれた試合。
それが実現すると知った四校のレギュラー達は喜んでいた。
純粋に試合が出来るからという者もいれば、
これで奴等を負かす事ができると思う者もいる。
それはそれぞれだった。
「それで、白石。どこが試合するんや?」
四校とも、というわけにはいかないと思ったのだろう。
謙也に聞かれ白石が答えようとした時、跡部が一歩前に出た。
「本当なら四校ともと言いてぇが、監督に一回だけと言われてな。
だからこの中か選抜してオーダーを作る。」
不満を言う者もいたが大人がそういうなら仕方ないと、
この参加者なら勝てるだろうと思った。
彼等に圧倒的に勝てばいい。勝つことができる。
ざわめきが大きくなる。
「まだ決まってねぇが、奴等とやりたい奴もいるだろ。」
見回しながら聞けば赤也が勢いよく手をあげる。
それを見て幸村はやれやれと思いながらも驚きはしなかった。
崎藍と名乗ったあの男子生徒との事だろう。
確かにあれは赤也をイラつかせる原因の一つだろう。
それを言うなら桃城もだろう。でも、彼は腕が痛むのか手を上げようとはしなかった。
「いいのかにゃ?桃。」
「お、俺はいいっす。まで腕痛むんで。」
菊丸に聞かれ、腕をさする桃。でもそれが理由、だとは思えなかった。
なにか別にある、そう思ったのか手塚が再び聞いた。
「桃城。あの時何を見た。」
遊埋に捩じ伏せられた時。と口にせずともわかったのか桃城がポツリと言った。
「目が本気だったんっす。向こうの真鴈って奴。
本気で、あの時先輩達が来なかったら、腕の骨が危なかったかもしれないっす。」
それを聞いて幸村は唖然とする。もはや自己防衛ではない。
でもそれは桃城の仮定。遊埋がそんなつもりはないと言えばそれまで。
「俺も今回はやめておいた方がいいと思う。異常はないが、念のためだ。」
乾に言われ、そうするっすと頷いた桃城。でもどこか安堵しているようにも見えた。
それを見て静観していた柳が言った。
「幸村。立候補もいいが、選んだ方が早いぞ。」
「……そうだね。でもやりたいって気持ちも尊重したい。」
「切原はいれるとして、後は俺達で決めた方がいいだろう。」
手塚がそれでいいかを聞くように見回せばそれでいいと言っているようで、
金太郎は白石によって説得されていた。
でもそれは正しかったかもしれない。
四人の中に一抹の不安があった。帰り際の遊埋のあの言葉。
選抜するならメンタルの強い奴にしろ。
そして、
――君達の大事なお仲間さんがいなくなってしまうかもしれないからね。――
あの言葉。脅しか、冗談か。いや、冗談ではない。脅しでもない。
「………」
でも、それでも彼等を負かす方が先だ。
いつまでも変わらないあの態度を変えるために。
「オーダーは明日発表する。異存はないな?」
金太郎が渋々といった表情だったが全員が頷いたのを確認し、
練習再開を言った。
各自練習に戻ろうとしている最中、ある少年が呟いた。
「あの人達はそう簡単に負けない。」
相談を始めた部長達を見て思う。果たして、彼女達が本気を出さない事を彼等は想像しているだろうか、と。
そんな呟きも思いも誰にもわからないだろう。