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「あー。つっかれたー!」


漆世が使っている特異なコートの、芝生の上に寝転がる樹多。
先程まで打ち合いをしていたようで、微かに汗をかいていた.


「樹多。寝転がらない。」


「うう、なんで紅陽は汗かいてないのさー」


どうやら樹多と紅陽が打ち合いをしていたらしい。
紅陽は汗を全くかいておらず、涼しい顔をしていた。
華弥が持ってきたドリンクを飲みながら、衣加八がベシッと樹多の頭をはたく。


「鍛え方が違うだろ。大体、お前は練習中に物を食い過ぎだ。」


「だってお腹空くんだもん。」


「しょうがないよ。」


「そーそー。しょうがないの!」


ドリンクを飲みながら、紅陽が持ってきたケーキの箱を開け、食べ始める。
頬を緩めケーキを頬張る樹多。真田が見ればたるんどるというだろうし、手塚や跡部の眉間し皺がよるだろう。間違いなく。
でも注意すべき立場である紅陽は咎めようとする気配をみせない。

食べている最中、樹多は思い出したように遊埋に聞いた。


「そーだ、遊埋。大丈夫なの?胸ぐら掴まれてたけど。」


「あれぐらいでどうにもならないさ。ただ手癖が悪い餓鬼の相手をするだけの事。」


琉規に比べればかわいいものさと相変わらずパソコンを弄りながら遊埋は答えた。
でも、その目はそう言っていなくて。
口だけで笑っている状態で。


「遊埋。調べてもいいけど、親に手出さないでよ。後が面倒だから。」


「わかってるさ。あくまで、俺が手を出すのは本人だけ、
身の程を知らない、糞餓鬼共だけだ。」


ゾッとするほどに、笑みを浮かべる遊埋。
樹多はコソコソと紅陽に話す。


「だいじょーぶなの?」


「……大丈夫だよ。それにああなった遊埋は本人の気がすむまで止まらないよ。」


クスリと笑う紅陽。その笑みは遊埋のそれに微かに似ていた。
全てを欲する、彼の目に。


「それで。樹多は誰と試合をやりたいの?」


「そうだなぁ……あ、なんか同調できる子達とやりたい!」


新たにケーキを手に取りながら答える樹多。衣加八は?と聞いていた。


「俺も同じだな。その同調をどれだけ使いこなしてるか気になるしな。そっちは?」


ジャージを脱ぎ、ボタンを外し楽な格好をする衣加八。
休憩していた吏苑と些那知はしばらく顔を見合わせ答えた。


「ダブルスという括りでなければ氷帝の部長に決まっている。」


「俺は特にはねぇな。部長クラスとやってみたいとは思うが。」


嫌な事を思い出したのか顔をしかめる些那知。
それに心当たりがあるのか全員が納得していたが。


「琉規は誰「あの赤目に決まってんだろうが。」


間髪いれずに答えたのは琉規。その目は本気で。
赤也以外とはやらないと顔に書いてあった。
樹多が遊埋へと目を向ければ遊埋は手を止め言った。


「俺は特にはないよ。興味をそそるのは青学と四天宝寺のルーキー。
でも、吏苑と同じで部長クラスとやりたいね。ああ、あとは立海の副部長と達人と呼ばれてる男もかな。

紅陽は、誰でもいいんだろう?」


「うん。そうだね。興味持った子なんていないし。」


本当に興味などないと言っている目。
樹多はケーキを飲み込んだ。


「で、なんでそんな事聞くの?試合は最終日でしょ?」


「最終日まで待っていられるほど大人しい子達じゃないよ。
そのうち、向こうから言ってくるよ。

私達が普段通りにしていればしているほどね。」


樹多はその意味がわからなかったが、しばらくしてからその意味を知る事になる。



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