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食堂で赤也を捩じ伏せた琉規。そして赤也に胸ぐらを掴まれていた本人である遊埋がそれを止めた。
その時の遊埋の目は冷たくて、直視する事ができなかったと赤也は言っていた。
そんな朝の騒ぎも冷めぬ中二日目の練習が始まった。
紅陽達は昨日同様に離れたコートで練習していて、昨日と変わった事と言えば、漆世の部員達と一緒のコートになった事だろう。
「ふーん。一緒に練習、ねぇ。」
「崎藍先輩!」
アップをしていた部員が琉規の姿を見つけ声をあげる。
朝の、赤也に掴みかかった時とは別人のように見えた。
漆世の部員達はアップを止め挨拶をしようとしていたが琉規がそれを制し、続けさせた。
「とりあえず部長からの伝言だ。他校と関わるか関わらないかは自分で判断すること。
だそうだ。」
「関わってもいいんですか?てっきり禁止するかと。」
「それは俺達だけだ。お前らは別に大丈夫だろうと判断したんだろ。」
そこまで言って琉規はニヤリと笑った。
「ま、俺の場合。関わったら関わったで間違いなく誰か一人は潰すからな。」
不気味な笑みを浮かべる琉規に部員は苦笑いしていた。
アップをし終えた者達を見回していると一人ある人物を見つけ声を書けた。
「大川!」
「?何用だ?崎藍」
「お前に副部長からの伝言。レギュラーはこっちに寄らねえから開始と終了はよろしく、何時もの時間で構わねぇだとよ。」
「合宿の方に合わせなくていいのか?」
俺達の方は合わせると思ったんだがと、大川と呼ばれた少年は首を傾げた。
それは先程琉規と話していた、1年も思っていたのか頷いていた。
琉規は琉規で変わらず、あの笑みを浮かべていた。
「元々合宿に参加する予定だったのはレギュラーだけ。
でも俺達は関わらず、いつもと同じメニューで練習していた。
だがそれが気に入らない奴もいるみたいだからな、
そこでお前らのレベルアップにと副部長が決めたんだよ。
たまには他校のレギュラーとやるのもいい刺激になるってな。」
「なるほど。了解した。
だけど俺等も俺等でやるかもしれんが。」
「それぐらいかまわねぇだろ。」
じゃあなと踵を返し去っていく琉規。一回だけ愛里の方を見て再び馬鹿にしたような笑みを浮かべた。
何か言いたげな顔をした者達もいるが、朝の事があったからか何も言わなかった。
「……なんや、朝から空気悪くなったわ。」
「ほんまや。」
財前が立ち去る琉規の背を見ながらポツリと呟けばたまたま隣にいた謙也も同じように琉規を見て、そして漆世の部員達を見る。
先程琉規に呼ばれていた大川が集めて指示を出していた。
「いいのかな。このままで。」
「そうだよね、大石。関わりたくないって言ってもね。」
アップを終えた大石と河村も同じなのか気にしていた。
例え朝の事があっても責任感の強いふたりだから気にしているのであろうが。
そして昨日より不機嫌となっていたのが跡部と幸村だった。
昨日の紅陽と遊埋の事から始まり今朝の食堂での出来事。
彼等の自分達に否はないという態度。
幸村はそれに加えて赤也の件で完全にイラついていた。
それを感じ取っているはずなのに、漆世の部員達は変わらずにいた。