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歓迎いたしませんよと言った男。
そしてそれを咎めない、漆世のレギュラー。
誰もが戸惑いを隠せないでいた。

何が起こっているのか、全くわからない。
愛里も同じだった。


「……なんか、感じ悪いっすね」


「桃。そういう事言わないの。」


桃城の言うことはわかる。確かに彼らの態度はどちらかというと悪い。
まるで、合宿など望んでいなかったようにも見える。

そう、遊埋と呼ばれた男の言う通り歓迎はされていない。
漆世のレギュラーだけではなく部員達にさえも。


「遊埋。ここでそれを言うな。場所を考えろ。」


その空気を察したのか吏苑がそう言うが声は咎めているようには聞こえない。
ただ、他校への建前のように聞こえた。


「だが早めに言っておいた方がいいのは確かだ。
俺と紅陽は馴れ合いなんざ、求めてないからね。」


「…………吏苑。説明はよろしく。」


そう言って、コートへと足を進める二人。
通り抜ける時でさえ目を参加者に向けようとしない。

コートに入る二人を見て吏苑は、ったくと舌打ちをした。


「……とりあえず俺の自己紹介だけはしておく。

俺は光矢吏苑。漆世学園テニス部副部長を務めている。」


「え。副、部長……?」


部長だと思っていたのか赤也がそう呟いた。
口に出したのは赤也だけだが他も口には出さないが同じ事を思っているのだろう。
吏苑を凝視していた。


「そしてこっちがレギュラー。」


指を指せば成り行きを見守っていた漆世側が話し出す。


「二年、此野些那知。」


「同じく二年レギュラー、崎藍琉規。」


「三年、鬼館衣加八だ。よろしく。」


「同じく三年、鹿羽樹多。衣加八にあんまりちょっかいかけない方がいいよ。

雑食だから。」


だからそれを言うな。えー本当の事じゃん。とまた同じやり取り。
でもそんなやり取りよりも樹多と名乗ったのは女なのになぜ、男子テニス部にいるのか。
樹多だけではない。さっさとコートに入ったもう一人の女もだ。

それを代弁するかのように跡部が一歩前に出て言った。


「男子テニス部じゃねぇのか?なんで女が二人も、しかも一人はレギュラーをしている。」


「男子テニス部だよ。」


答えたのは、コートに降りていった男だった。
跡部にまるで値踏みをするような目を向けていて、
くくっと笑った。


「俺は真鴈遊埋。それでこっちもレギュラーで、」


「……神奏、紅陽。」


一瞬だけ目をやりすぐに戻す、紅陽と名乗った、女。
遊埋の紹介にざわめきが大きくなった。


「どういうことだ?女が二人もレギュラーって」


「訳わかんないにゃ」


「……その確率はほぼなかったんだが。」


「んな冗談面白くないっちゅうねん」


「でも、冗談には見えへんよ?」


近くにいた者と、既に練習の相談をしている漆世の吏苑達を見ながら話していると、
金太郎が樹多の元へと駆け寄り


「姉ちゃん。」


「ん?なに?」


「姉ちゃんは強いんか?」


その問いにアホ!と白石がつっこむ。
その光景を見て樹多はふふふと笑い笑みを深めて、


「強いよ。」


そう言い切り続けた。


「でも、この中だと紅陽が一番強いよ。

多分、いや、絶対かな。君の部長に勝てるよ」


だって、あの子はと続けようとしたがコートから樹多を呼ぶ声がし
樹多はその方へと行った。

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