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そこは都心とは違い、車も通らなければ人もあまり通らないそんな場所だった。
そんな場所に一つの学園があった。

可も不可もない普通の学園。
でもそれは表向き。
その学園は特殊で、特異過ぎる学園。
そんな学園には持つ者と呼ばれる生徒がいた。

なぜ持つ者と呼ばれるか、それは後々わかることであるから今は伏せておこう。
そんな学園の設備が十分と言える程整っているテニスコート。


部員達が練習する中、テニス部レギュラー鬼館衣加八はため息をついた。
それに気づいたのか部活中にも関わらず飲食をしている女子でありながら同じくテニス部レギュラーの鹿羽樹多はその手を止めた。


「どうしたのさ、衣加八。ため息つくなんて珍しい。
まさかの告って振られた感じ?誰?誰に振られた?
まさか紅陽に告ったの?なら振られても仕方ないよ。」


「そんなわけねぇよ。
第一紅陽に告白する奴はラスボスの魔王に立ち向かう勇者級だ。」


それより食べながら喋るなと樹多にいうが樹多はすでに次のお菓子に手を伸ばしている。
その口元に先ほどまで食べていたケーキのクリームが付いていたが敢えてなにも言わなかった。
樹多ならそれを知っていてそのままというパターンが多い事ぐらい誰でも知っているからなにも言わないのだ。


「で、本当の理由は?」


一袋食べ終わった樹多が改めて聞けば衣加八は頭を掻きながら言った。


「今度の合宿だよ。」


「?……ああ!関東と関西の強豪校と合宿の話?」


「学園が何を企んでいるか不気味でな。」


それは衣加八だけが思っている事ではなかった。
テニス部のレギュラーを含めた部員全員が思っていること。
あれほどまでに外との関わりを絶たせた張本人達が今度は外と関われと言ってきたのだ。


「でも、いいのかな?あたし達と合宿をして、
その子達、壊れるかもしれないのにさ。」


新しいお菓子の封を切り再び食べ始める樹多。
それを見て、衣加八は彼女に対しての呆れのため息をついた。

現在レギュラーにあてられたテニスコートでは副部長の光矢吏苑と此野些那知が打ち合いをしている。
二人とも何時もより感情をコントロール出来ていないようにも見えた。


「そういえば、シングルス三人が居ねぇじゃねぇか。」


「んーと、確か琉規が一年せーの指導に行ってて、遊埋と紅陽はサボり。」


あいつらはと衣加八は呆れたが紅陽と遊埋に関してはもう何を言っても意味などなく、
しょうがないかと衣加八は体を伸ばした。

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