四季 | ナノ







仲直り



「…………」



ただいま、漆原は反省中



妖術で怪我を治した白椿はソファーに座ってぼーっとしている
翁面にキスをされたときのまま、着物も少し乱れている



(どうしたものか……)



漆原は先ほどの『女は面倒くさい』発言(そんなにひどい言い方をしていないが)をどう謝罪しようか…
今白椿は怒っているのか…(怒っている)
かなり悩んでいる





「……はぁ」



申し訳ないを通り越して少し悲しい
白椿が切り付けられてたのは二回目

一回目は白椿を守るはずの自分が
二回目は白椿を守るはずが守れなかった

白椿が傷ついてしまったのが悲しい
全て自分のせいであるのに



「ため息つきすぎ」



顔を見るのが申し訳なくて目線をそらしていた白椿の方から声がかかる



「すみません」



…顔が見れない漆原



「……もう少し気を付けるようにするわ。ごめんなさいとは言わないけど」



あーあ、白椿の方が謝ってきてしまった
でもまぁ、白椿にも悪いところはあった
いわばお互い様だ



「…申し訳ありませんでした」



こればっかりは漆原、白椿に頭を下げる



「ふん」



白椿はそんな漆原に笑顔で頷く
顔を上げた漆原はその表情を見て少しほっとする



「まずあたし怒ってないしね。あんたは執事で従う側だけどロボットじゃないんだから
怒ることぐらいあるさ。怒らせるあたしも悪いけど」
「しかしあれは…」
「はいはい、もうこの話は終わり。長引く方が腹立つわ」



白椿はそういうと自分の座っている横をポンポンと叩く
正直疲れた漆原は素直にそこに座る

すると先ほどの翁面から漂っていた香りが白椿の方からかすかだが漂ってくる

なーんか嫌な感じ



「着替えてください」
「…選んで」



もう何をするのも面倒くさい、という雰囲気全開の白椿は適当に返事をする



漆原が選んで持ってきたものは訪問着でもきらびやかなものでもなく
いつもの白椿らしい紫地に白い蝶が書かれた着物と黄色の帯



「それでいいの?」
「いつもの白椿様は『これ』です。一応訪問着っぽいですし」
「あぁ、そう」



白椿はそう返事すると漆原の目の前で着物を脱ぎ始める
帯を付けることで恰幅がよく見えている白椿だが、本当はものすごく細い



実は漆原、この光景は見慣れている

最初は注意していたのだがもう最近になると慣れてきてしまった



「姫だとかなんだとか言って…キスまでしてくるなんてほんと何なの」



ぶつくさと文句を言う白椿は真っ白な襦袢になると漆原に来ていた着物をわたす



「本当、見せつけてくれますねアイツは」
「………」



じーっと自分の唇を見つめながら言う漆原に白椿は呆れた



「キスしてもいいと言いたいが、アイツの後は嫌だろうな」



白椿はそういうと漆原から着物を受け取る



「したいですよ」
「いいの?」
「いいですよ?でも口紅はいただけませんね」



白椿はふーん、と言いながら鼻で笑っている






度々交わされるこういう系の会話だが、白椿は勿論冗談で言っているのであろうが
漆原に至っては本音なのかもしれない



だって、美人がキスしていいって言ってくるんですもん


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