四季 | ナノ







腐れ縁兄弟


「え!あれあんたが作ってたの?」
「急でしたので作らせていただきました」





かなりびっくりした様子の白椿



それもそのはず
先ほどのディナー
なんと漆原が作っていたそうです

料理もできる、仕事もできる、性格は…どうかわからないがやっぱり執事漆原は最高





「本当に!?料理も作れるの!?」
「執事ですから」



当然の事、と漆原はため息をつく



「すごい!……あぁ、いいわね…あんた素敵」



白椿はぽけーっとしながら隣を歩いている漆原を見つめる



(ワイシャツに腕まくりして…フライパン……)



妄想がどんどん膨らんでいる白椿は幸せそうな顔をしている
あぁ…漆原が料理しているその場にいたらきっと抱き着くだろう





「…なんて顔をしてるんですか」



白椿の間抜けなお顔に呆れた漆原は頬を触って顔を近づけた




「あん…」




完全に妄想に浸っている白椿はニヤニヤしている
コイツ頭おかしい、と漆原は思った











「俺はまだ部屋には帰らん」
「いやだよ。俺眠いもん」
「じゃあ、お前は戻ってればいいだろうが」
「そうすると百瀬に叱られちゃうんだよ?「千鶴はどうしたー!」って。そんな事もわーかんないの?」
「いちいちムカつくな。それに執事に叱られるって何なんだよ。馬鹿か?」
「千鶴と違って俺はツンケンしてないの」
「俺の性格が悪いっていうのかよ」
「自分で分かってんじゃんバーカ」
「クソガキ」





そんな会話と共に廊下の向こうから現れたのは本郷兄弟





「こんばんは」



白椿が本郷兄弟に声をかけると兄弟は話し合いをやめて白椿の方をジーッと見る

刺すような視線に白椿は少し警戒することになる



「「おい・ねぇ」」



同時に話し始めた本郷兄弟





「黙ってろよ」
「ホンット毎回毎回何なの…」



睨みあう双子はまたもや険悪な雰囲気になる





「飲みに行くの?お兄さん」
「あ?」



白椿に視線を移した千鶴はかなり不機嫌になっている



「ほら見てよあの顔と態度。これが性格がいいって言える?マジで意味わかんないよね」



千鶴より先にスキップしながら白椿に近づいた千景は、白椿の顔を覗き込む
彼の明るい黄緑色の瞳が白椿を見つめた



「お前こそマジなんなの」
「うるさいなぁ〜」



またもや喧嘩をしそうな本郷兄弟に白椿は止めにかかる



「これこれ。やめなさんな」
「ほら叱られちゃったじゃん」



千景はムスッとして腰に手を当てている
彼の妙に柔らかそうな髪の毛がさらっと揺れる



「どっちがわりぃんだよ。おい鏡、飲みに行くならさっさと行くぞ」



舌打ちをした千鶴は白椿達の横を通り過ぎていく



「待って待って」



ずんずんと歩いて行ってしまう千鶴を追いかける白椿は彼の隣に並んで歩く





「白椿様屋敷の外に出られるのですかー?」



白椿の背中に声をかける漆原



「そのつもりだけど、彼がどこに行くのか…。ねぇ」



白椿は先に歩いて行ってしまう千鶴の軍服の袖を掴む



「屋敷に一番近いところに行く。…来るなら早く来い」



千鶴はそう言うと白椿の腕を掴み歩いて行く





「………」



漆原が唖然とした様子で二人の後姿を見送っていると千景が耳打ちしてくる





「お兄さーん。千鶴と白椿さん、二人っきりにさせとくと危ないよー?何されるか分かんないよー?」
「何かあれば戦争です。潰しますからなめないでください」



漆原は無表情で千景にそう伝えると白椿たちの後を追った





「怖ぇ…」



千景はそう言うと三人とは逆の方に歩みだした


[ 116/119 ]

[*prev] [next#]
[演目]
[しおりを挟む]