四季 | ナノ







共鳴

ワイシャツになった小鳥遊は軍服をソファーの背もたれかける
何となく小鳥遊の香水の匂いなのかいい香りがしてくる


この部屋のぼんやりした明るさと何となく大人な雰囲気
男女二人きりとなるとかなり怪しい…





「細いと思ったら意外と筋肉あるんだね」
「一応頑張って鍛えてるからね」
「触らせて?腕」
「???いいよ?」



小鳥遊は足を組んだまま白椿の方に体を向け、腕を伸ばす




「………」



一瞬白椿は腕を広げている小鳥遊の胸に飛び込んでやろうかと思ったが
それを押さえて小鳥遊の肩を触り、二の腕を触り…と言う風に撫でていく

ぼーっとした表所の白椿は心なしか不用心





「筋肉とか鍛えてるの好きなの?」
「………」



白椿は黙って頷き案の定小鳥遊の腕に抱き着いた



「……っ!こら白椿さん!!」



ビクッとした小鳥遊は白椿を離そうとする
ドキドキ



「………」



無言ではあるが白椿はかなり嬉しそうな顔をしている
小鳥遊が離そうとするのに反発して白椿はぎゅーぎゅーと抱き着いていく

勿論白椿が小鳥遊の腕に抱き着けば抱き着くほど白椿の体に腕が密着していく



ドキドキを押さえようとして腕の力を抜いた小鳥遊
力が抜けた彼の手が白椿の太ももの上に乗っかる



その瞬間から、小鳥遊の視界がふわふわとしてくる
寝る瞬間のあの心地いい感じ







「小鳥遊」
「…ん?」



白椿に呼びかけられた小鳥遊はふわふわな表情で白椿に顔を近づける
白椿と小鳥遊の座高の高さの違いから白椿は小鳥遊を見上げる状態になる



「眠い?」
「なんか…ちょっと……」
「大丈夫?寝る?」
「いや、大丈夫」



しかし、そんな事言っている間にも小鳥遊の視界はどんどんフワフワしてくる
頭の中がぼーっとしてきてかなり気持ちがいい




「ホントに?」




白椿が小鳥遊の腕から離れ、心配そうに彼の顔を覗き込んでくる
すると、いきなり今までフワフワしていたはずの小鳥遊の視界がだんだんとクリアになってくる



(だめだ…しっかりしないと…)



小鳥遊はそうは思うが、人生で初の心地よさに完全に心を奪われてしまったようだ







「…待って」



何を思ったのかこちらを覗き込んできている白椿の手を握った小鳥遊
すると再び頭の中がふわふわしてくる




あぁ、これだ
白椿に触れるとこの感覚が来る




だめだだめだと思いつつも小鳥遊の体は意思と反して動いてしまう



「どうしたの」
「君の妖術はなんかすごいね…」



小鳥遊が心地よさと葛藤し白椿の手を両手で握りながらそう呟くと
白椿は口元を緩める





「いきなりどうしたのかと思ったら…」
「はぁ…凄いぼーっとする。あーもう」
「これこれ。しっかりしなさい」



白椿は無理やり小鳥遊の顔を両手ではさむと真っすぐこちらを向けさせる
小鳥遊のまどろんだ赤茶色の瞳が真っすぐこちらを見ている



「こんなにあたしの妖術にどっぷりはまる人はそうそういないけど。っていうか今も妖術かけてるつもりはないんだけど。相性が良かったのかしら」
「妖術に相性なんてあるんだ。びっくりだなぁ」
「もう部屋に戻ったら?今日はもう寝ちゃいなさいよ」
「ごめんね。そうしようかな…」



小鳥遊はそう言うと無理やり自分自身を白椿から離し、立ち上がった
頭をぶんぶん振り、しっかりしようと頑張っている





「気を付けて。あたしはもうちょっとここで飲んでくから」
「あ、あぁ…ありがとう。夕食に付き合ってくれたお礼もしたいし、今度は居酒屋行こう」



こちらを見て微笑んでいる白椿を見て小鳥遊はだんだんと意識がはっきりしてきた





「勿論。また今度…おやすみなさい」



小鳥遊に軍服を着せた白椿は小鳥遊の肩に触れる
そして眉を困らせ名残惜しそうに小鳥遊を見つめた後、目を伏せた



女優のような大げささはなく、ごく自然な表情で感情を伝えられた小鳥遊は
思わず白椿を抱きしめそうになったがグッとこらえる





「ありがとう」



白椿の髪をさらっと触り、軍服をひるがえして小鳥遊は去って行った


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