「執事さん、怒ってた…?」 「ん?たまにふてくされんのよ。あたしにもわかんないわ」 「そ、そうなんですか…」 「気にしなくていいわ」 「はぁ…俺なんかしたかな」 小鳥遊は前菜に手を付ける 「申し訳ねぇが、執事に有無は言わせないよ」 白椿はワインが注がれたグラスに口を付ける 「藩主はあたし」 そんな事を言いながら白椿は黙々と食事をしている 「………」 小鳥遊は唖然として白椿を見ている まさかそんな言葉が白椿の口から飛び出してくるなんて思ってもいなかった そして、白椿のこの堂々とした雰囲気 「なぁに?そんなに驚くことないじゃない。冗談よ」 「びっくりしたー…。急に雰囲気変わるんだもん」 「ふふふ。あ、そうだ」 白椿はそういうと手を止め口を拭く 「藩主の中で結婚している人はいるの?」 「俺が知っている限りいないけどなぁ…。どうして?」 「みんな若いからどうなのだろうと思って。でも確か最年長の山門の江東さんは結婚するとかしないとか、って聞いたんだけど」 「あぁ、確か財閥の娘さんと結婚するとか…。でも結婚のことについてはあくまで噂程度でしたけどね」 「公式に発表されていないことは知っているがここまで噂が着ていれば本当に近いと思ってもいいと思うんだけど」 「公式ではないっていうことは色々難しい問題があったんでしょうね」 「そうね…」 小鳥遊は何やらそわそわしている様子 「なぁに?」 「白椿さんはそういう…あの…婚約者さんとかいるんですか?」 小鳥遊は照れ隠しなのか前髪をさらっと横に流してうつむく 「結婚してくれるの?」 白椿はそういうと小鳥遊のワイングラスにワインを注ぐ 「いっ…う……あの…俺でよかったら……」 小鳥遊が“何か”を言いかけたときまたもや部屋のドアがバーン!と開く そこに現れたのは勿論、執事の二人 …殺気立ってるよ 「「失礼いたします」」 漆原はツカツカと小鳥遊の方に歩み寄り前菜を置く 心なしか動作が乱暴 「……ご不便はございませんでしょうか」 先ほどの微笑みとは一変して鬼の形相の漆原はじっとり小鳥遊を睨みながら言う 「………」 ここで小鳥遊は気づく と、いうか思い込む (漆原は白椿さんのことが好きなんだ!!!……なんか…俺も負けてられない!!!) 変なところで張り合おうとする小鳥遊 しかも思い込みで 「お気遣いありがとうございます。大丈夫です」 先ほどのおどおど小鳥遊から一変、ツンとした表情の彼は漆原を見る 「………」 「………」 急にそんな態度を取り始めた小鳥遊に驚いた漆原だが、彼も彼で負けず嫌い 睨みあう二人 「なんだか険悪ね…」 「…申し訳ありません」 険悪な二人の様子を見ている白椿と青柳 厳しい目つきで険悪な二人を見つめている青柳は深く頭を下げる 「あんたが謝ることじゃないわ。…ありがと」 白椿はそういうと頭を下げている青柳の肩に触れる ビクッとして頭をあげた青柳は白椿を上目使いで見る 「けなげねぇ……」 「……っ…」 そういう白椿は青柳の軍服の襟に触れる 白椿のなめらかな指先の動作に青柳は動悸する心臓をどうにか押さえつけ、必死に返事を考える 「立派ね、ありがとう」 白椿の顔を見た青柳はぽーっとして見つめている そんな彼の肩をポンポン、と叩いた白椿は視線を小鳥遊の方に戻す より近い距離感で何気ない接触だが、なんとなく突き放すような動作をする白椿 真っ赤になった青柳は足早に去って行った [演目] [しおりを挟む] |