「数千年のわだかまりはこれで解決ですね」 先ほどまで物騒なことを言っていた江東がひと段落させるためにつぶやいた 「あの、さっき鏡様が奇襲されたと聞きましたがやはり『般若』なのかな?」 額をさすりながら席に着いた小鳥遊 黒塚が少し顔を上げ、チラッと小鳥遊を見る 「あぁ。窓から入ってきた。あなたたちの所には来なかった?」 白椿の質問に皆首を横に振る 「今のところ『般若』が特に狙ってる狛兎の近況を聞きたいんだ。俺に何かできることがあればと…」 東条であるにもかかわらず、小鳥遊は協力的かつ前向きで助かる そんな小鳥遊に白椿は少しだけ好感をもった 「ありがとう。『般若』はことあるごとに芝居がかったことをしてくる。東条と西条が分裂するに至ったあの昔話の内容をちらほら出してくる。先ほども翁の面を付けた『般若』に姫って呼ばれた。姫っていう年じゃないのに。嫌味かしら」 「嫌味ではないと思いますけど…。あれはただの昔話なのでは?」 「いや、昔話が本当なのかはわからないがこの昔話に沿って『般若』が動いているというのは事実」 「じゃあ、その昔話のこと知れば、少しは『般若』についてわかるかもしれない」 白椿と小鳥遊の会話を聞いていた庵が何やらそわそわしている まごまごして言い出せない庵の背中をちょんちょんと突っついている執事の千日 「…あの……」 どうやら庵は千日に背中を突っつかれると安心して話し出せるらしい 「どーしったのー?」 芙蓉も内気な庵に気を使ってなのか話かける 「その昔話について…いろいろ調べてみたことがあるんです」 「なにか分かったことが?」 「……」 庵は黙ったままコクコクと頷く 「でも…あまりにも資料が多すぎたので要所だけまとめたものを用意しましたので、後で…ご覧ください…」 「ほう。さすがねぇ。頼りになるわ」 「………」 白椿に微笑を向けられた庵は真っ赤になりながらうつむいてしまった 「いよいよ、という感じがいたしますね。出雲としても安心でございます」 「本当ですね!もっと難航するかと思っていました…」 市松と黒塚はそういうとおもむろに席を立つ 「藩の特色に合わせて連携を強めるための提携や協定、設備投資などはこちらから提案させていただきますので是非ご検討を。それと、今回は全員宿泊とのことですので別の会議室を開けておきます。では、これにて」 そう言って深くお辞儀した二人はそそくさと部屋を出て行ってしまった バタン あっけなく取り残された藩主たちは一瞬静寂に包まれる 「あ、あの!何かあれば呼びかけてくださいね!いつでも対応しますので!」 静寂が耐えられないのか、小鳥遊は立ち上がりながらそう言う 「「無駄話だったら付き合う気はないから」」 本郷兄弟はそういうと軽やかに、さっさと部屋を出て行ってしまう 「…資料の準備を。失礼しますっ」 庵は慌てて立ち上げると執事を置いて本郷兄弟の後に続く 取り残された千日はお辞儀をして庵の方を向き歩き出すと 椅子に地味に手をぶつけ若干悶えながら部屋を出て行った 「俺手伝いますよ!」 元気いっぱいの小鳥遊は走ってついて行く 千日同様、お辞儀をして去って行った青柳 あたしもそろそろ行こうかな…と白椿がテーブルに手をついたとき ものすごい視線が来る そちらの方向を見ると 藤堂だ めっちゃ難しそうな顔をして白椿のことを見ている 『行くな』 とでも言っているかのような視線 白椿は、藤堂の圧力によっていったんとどまることに 「では、私も。鏡様には伺いたいことがありますので後に」 江東はそういうと白椿の顔を覗き込んでから執事の国坂と共に一礼して部屋を出て行く 「僕もー」 芙蓉はそういうと椅子からピョンッと飛び降りる 「今は、お腹すいちゃったからダメだけど、後でみーんなと、お話しするからねー」 フワフワと歩いて部屋を出て行く芙蓉 その後を追う丁花は、芙蓉の忘れて行ったビー玉を取って出て行く 「拙者も…」 心は悩殺スマイルを藤堂を白椿に向けて部屋を出て行く [演目] [しおりを挟む] |