くたばれ異世界
大して勉強もせず、そこそこの高校を受験し受かった私は春休みを満喫していた。
高校で離れてしまう中学の友達と毎日のように遊びに行って、母には溜め息をつかれてしまうほどには。
そんな私の世界が反転したのは、地面に誤って落としたプリクラを拾おうとしゃがんだとき。小さな写真を取ろうと苦戦し、やっと拾えて視線をあげると。
そこは私の常識が通用しない世界でした。車はない、電車もない、飛行機もない。移動手段は徒歩、馬車、船。そもそも電気機器が存在しないんじゃない?って感じのレトロな風景。
そんな世界で、私に出来ることなんてなに一つとなくて。お湯なんてボタン一つで沸く時代で生きてきた私に、火の起こし方もそんなの分かるわけがなくて。
そもそも今まで私を守ってきてくれて両親もいない訳だ。私は半日も立つと途方にくれ地面に座り込んでしまった。
そんな私に降ってきた声にすがるしかなかった。
『あなたが元の世界に帰りたいと願うなら、この世界を救ってくれないか。魔王から、この世界を守っておくれ』
私はその声に希望を見いだし、なんとか立った。そして世界を救うため、自分を鍛えることにした。
地面に頭をこすりつけるようにして頼み込み、魔法使いの弟子になった。師匠から魔法を請うと同時に世界のことを知っていく。
この世界に来て半年後。私は師匠の元を旅立った。師匠に教えてもらった魔法を生かし、私はダーマ神殿にたどり着いた。
ダーマ神殿は戦士や僧侶、踊り子などに転職できる施設であり、更なる特技や魔法を習得できる所だ。
私はダーマ神殿を拠点とし、何度も転職をしてすべての職を極めた。
すべては強くなって魔王を倒し、日本に帰るためである。
その課程で同じような理由で旅をしていたアルスやマリベルたちと出会い、一緒に旅をするようになった。
魔王を倒してすべてを終えると、私がこの世界に来てから3年が経過していた。
魔王がいなくなった平和な世に、やっと神様が復活した。神様は礼を述べた後、私が待ち望んでいた言葉を発した。
「ふぉっふぉっ、お主には大変な苦労をかけたの。本当にすまなかった。そしてありがとう。君を元の世界に返そう」
「っ!あっ、ありがとうございます!」
アルスたちに別れを告げ、私は神様に魔法をかけてもらった。マリベルは泣いてくれて、これからも精々元気にしなさいよね!とツンデレしてくれた。
私も涙が止まらなくなってわんわん泣きながら、別れを告げた。
「みんな元気でね!」
「サクラも!世界が違っても僕らずっと友達だからね!」
そうして私は元の世界へ帰るはずだった。そう、帰れるはずだったのだが、
『あ、』
神様がそう言った。
そして私がどうなったかというと、
「本日のショーもこれが最後になります!当一座いや世界で一番の踊り子サクラの舞をご覧ください!」
砂漠に倒れていた私を拾ってくれたサーカスの一座の恩返しに、踊り子やってます。
……もう家に帰りたい…。
くたばれ異世界
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