>> 仮面建て前の裏側

稲妻主とオーガ



フットボールフロンティアの準決勝、信じられないことが起きた。世宇子中が、負けてしまったのだ。圧倒的破壊力を持って帝国学園を下した世宇子中が、負けた。
ある日、病院が騒がしくなったと思えば、運び込まれてくる中学生たち。その中に、見慣れた美しい金糸を見つけて思わず駆け寄った。

「アフロディくん!?どうしたのその怪我!」
「あ、名前さん、か。…負けちゃった」
「負けたって、アフロディくんが?」

信じられない。世宇子中の帝国学園との試合のビデオをみたことがある。強かった。恐ろしいくらいに強い世宇子中。けど、その世宇子中が負けた?

「名前さん、気をつけて…次は、雷門中だ」

アフロディくんがそれだけ言い終わると、看護師はアフロディくんを乗せたキャスターを引いて治療室に入っていく。

次は雷門中。
本来決勝で戦う相手だった世宇子中が敗北した。となると雷門中と戦うことになるのは、世宇子中を下した相手。
不安がざわりと不快に胸に広がる。

「守…!」

守が危ない。
病院から雷門中へと駆け出す。いても立ってもいられなかった。
病院と雷門中はそこまで離れていない。直ぐに着く。雷門中の校舎が見え、一息ついた所で、腕を掴まれる。
振り向くと、そこには軍服のようなものを着た少年。

「…あの、離してくれませんか?私急いでいるので」
「名字名前だな」

鋭くつり上がった、底が伺えない瞳。事務的な口調に乗せられた私の名前。
なんで私の名前なんか知っているのだろう。怖くなって手を振り払おうとするが、振り払えない。
逆に手を締め上げられ、骨が軋んだ。

「い、!」
「質問に答えろ」

いつの間にか路地裏に連れ込まれている。逃げ道は塞がれてしまった。それでもどうか逃げられないものかと思案していると、また腕を締め付けられた。痛い。
瞳が答えろと強要している。

「そうです、よ」
「今からお前をフットボールフロンティアの決勝戦が終わるまで拘束させてもらう。拒否権はない」

なにを言っているんだこの子は。理解出来なくて、しかし本能的にはヤバいと感じて。
サッカーではないけれど、サッカーの技を発動させる。目くらましくらいにはなるだろう。案の定一瞬拘束が弱った内に、彼から離れ大通りに逃げ走る。

「バダップ何やってんだよ。一般人に逃げられちゃって」
「…すまない」
「こんな普通そうな人間がなにか仕掛けてくるなんてバダップも思わなかったんだろ」

目の前が急に陰ったかと思うと、先ほどの少年と同じ服を着た2人が道を塞いでいて。後ろを振り向くと少年、バダップがこれまた道を塞いでいる。

「どうやって連れてく?反抗的なら肋1本くらい折っちゃう?」
「お前高々一般人にえげつないな」
「なんだよエスカバ。任務において最善となる策を巡らすのは基本だろ?」

顔の右側で三つ編みをした子は、平気でそんなことを言う。それに返す子・エスカバはえげつないという割に、言葉には非難よりは軽薄さが伴っている。
バダップ、はそのやり取りを無関心に眺めている。

「あなた、たちは誰なんですか」

恐怖に少し語尾が揺れた。それをくだらないといった風に空を仰いだ、後から現れた2人。バダップは、その何にも心を動かさずに口を開いた。

「我らはオーガ。円堂守を排除するために、未来からやってきた」
「守を?守に何をするつもりなの!?」
「っていうかあんたはさ、自分のこと心配したほうがいいんじゃない?」

三つ編みの子がそう言って、開いていた距離を一気に詰めた。
どすん、とお腹に強い衝撃。視界がぐらりと傾く。

「じゃあ俺たちの作戦に協力してね、名前さん」

笑んだ顔が変にブレて、すぐにブラックアウト。






神崎さん
#リクエストありがとうございました。オーガと会話とのことだったので、会話させてみたのですが、…殺伐みたいな雰囲気に。すみませんでした。
いつもサイトの訪問ありがとうございます。



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