>> 僕らから君へ贈る花

不動成り代わり主と鬼道とデモーニオ



世界には自分の容姿によく似た人間が3人いるらしい。

「鬼道くんのそっくりさんはゴーグルにマントしたら簡単に作れるんじゃね?」
「不動、言うな」

イナズマジャパンの買い出しの際、なぜか鬼道くんといくことになった私、不動明王こと名字名前は、店頭に置いてあった赤い布を指差し、からかう口調で発言した。
鬼道くんは心外といわんばかりにきつい視線をゴーグルの中から向けてきたので、柔く肩をすくめて返す。

「後ドレッドしなきゃいけねぇな。…まぁ、そんなに怒んなって。あー、あれデモーニオじゃね?」

話を逸らすように、前方の花屋にいる縛られていないドレッドヘアーに視線をやった。
デモーニオくんは既にマントもしていないし、ゴーグルもつけていない。普通の格好をしていれば、本当にそこらの子供と変わらない。
デモーニオくんは、鬼道くんとは違ってつり上がっていない目で、ぼんやりと花を眺めているようだった。

「へぇー花なんか見て。あいつ誰かに送るのか?」
「さあな。…こっちに気づいたみたいだ」

鬼道くんの言葉通り、私たちに気づいたらしいデモーニオくんはこちらに寄って来た。

「久しぶりだな!キドーのマントですぐ君たちだって分かったよ!」

やけにフレンドリーな態度に、チームKの時の面影はない。緑川くんみたいにデモーニオもキャラを作っていたのかというくらいの変貌だ。
前とは違ってゴーグルをつけていないから、目がよく見えて感情が分かりやすいというのも、雰囲気が変わったように見える一因なのかもしれないが。

「おー久しぶりじゃねぇか。もうお前はマント付けてないんだな」
「さすがに普段からつけてるのはどうかなって思ったからね!」
「不動、デモーニオ。それは俺に対する当てつけなのか?」

不機嫌そうにいう鬼道くんに、私はニヒルに、デモーニオくんはまあまあと言って笑った。
デモーニオくんは、あ!と言って、ちょっと待っててね!とまた花屋へUターンして行った。
その行動を疑問に思って鬼道くんを伺ってみるも、鬼道くんも理由が分からないようで考えているようだった。
しかし本当に直ぐに花屋から出て来たデモーニオくんは両手に花束を抱えていた。

「はい、これ!」
「え!?」

いきなり花束を手渡された。前世でも人から花束を貰ったことなんかなかったし、しかもイケメンの可愛い笑顔つきときた。
照れてしまった私に代わり、鬼道くんがデモーニオくんに尋ねる。

「デモーニオ、これは一体どういう意味なんだ?」

その声に何故かトゲがあるように感じ、鬼道くんの顔を見る。…あれ、なんで不機嫌なんだろ?
対するデモーニオくんは上機嫌なのだが。

「イタリア代表争奪戦の時には迷惑をかけたからね。ジャパンの宿舎にでも飾ってくれよ!
綺麗な花はあるだけでも場を和ませるから。ねぇフドー?」
「まぁ、そうなんじゃねぇの?」

デモーニオくんがくれた花束は綺麗だった。花の名前なんてそんなに分からないが、鮮やかな色彩や淡い匂いに心は穏やかになる。

「わざわざありがとな」
「フドーの笑顔が見れただけでも十分だよ!」

デモーニオくんの言葉に慌てて表情筋に力を入れる。最近どうも“不動明王”が緩みがちだ。

「あー笑ってる方がいいのにー」

残念そうなデモーニオくんの声。もう1回笑ってよーとせがんでくるデモーニオくんに困って鬼道くんを見る。

鬼道くんはいなかった。

は、え?ちょっ待ち。なんでいない?
周りを見渡して鬼道くんを探していると、鬼道くんは見つかった。片手に薔薇を一輪持っていた。あれ、買い物リストに薔薇なんてなかったよね!?

そしてそのまま薔薇を持った鬼道くんはこちらに戻ってきた。そして徐に私に薔薇を差し出した。

「やる。受け取れ」
「は?え、なんで?」
「なんでもいいだろう。それに俺がいちいち理由を話さないと、お前は俺の意図を理解出来ないのか?」

挑発するような鬼道くんの台詞。なんでそこで喧嘩腰なのかはまったく名前理解できなーい状態なので、へぇへぇと流しておく。
デモーニオくんはもうせがむのは止めたが、笑顔のまま「キドーは素直じゃないね」と言った。







僕らから
君へ贈る







#君影さん
リクエストありがとうございました!
デモーニオくん書くの楽しかったです。鬼道くんはなかなか夢主がつかめなくて焦ったりしますが、デモーニオくんは余裕綽々といったイメージですね。
本編で鬼道が不動とこのような仲になるのはもうちょっと先の話になると思います。
最後にもう一度、リクエストありがとうございました。



prev//next
「#甘甘」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -