>> 貴方と未来の話を

稲妻主で10年後の話
捏造注意



ひかれそうな女の子を助けるために車道に走った、あの日の出来事はたびたび蘇ることがある。赤と痛みと終わりを感じた記憶。
私の始まりはそこからだった。
守と、サッカーと、みんなと出会って動き出した歯車。
FF、エイリア学園、FF世界大会。
色々なことがあった。色々なものを見た。色々な人と出会った。
色々な人に助けられた。支えられた。守られてきた。
だから、私は。

「サッカーの管理なんて、許さないんだから」

今度は助けたい。支えたい。守りたい。
影山さんが愛したサッカーを。守が愛してやまないサッカーを。私とみんなを引き合わせてくれたサッカーを。
感動と爽快感と努力と涙を味わうことが出来るサッカーを。
楽しいサッカーを奪われるわけにはいかないんだ。



+++++++++



「監督!今日のメニュー終わりました!」
「よしっ!
よくやったなみんな!前よりスピードもテクニックも上がってるぞ!」

円堂守は教え子に向かって快活な笑顔を向けて、一生懸命練習を頑張ったことを誉めた。勝ちたいというキャプテン松風天馬の熱い思いに応えた円堂は、現在雷門中サッカー部の監督である。
個々にアドバイスを伝えたあと、今日も青く澄んだ高い空を仰いだ円堂。その視界に淡いパステルカラーが映る。
揺れるスカート。近づいてくる影。
円堂は目を見開いた。心の底から驚愕していることが、天馬たちにも伝わった。天馬も円堂が見ている方向へ目をやった。天馬の隣にいたはずの円堂は、すでに走り出していたが。

「守ー!」
「名前っ!」

勢いよく抱きしめあった2人に、天馬たちはどよめく。普段はサッカーのことを真剣に考えている円堂が、とろけたような甘い顔で女性を抱きしめていたから。普段の円堂とのギャップに、開いた口が塞がらない。
ぱたぱたと走る音がし、天馬たちが円堂の恋愛場面から目を離し、そちらを見やる。少し不満そうな音無春奈が、こちらに向かっている最中だった。

「もー名前さん置いていかないでくださいよ!」
「音無さん!あ、あの円堂監督と、だっ抱き合ってる人って…」

子供たちは面識がある音無春奈に答えを詰め寄る。ははーん、と揶揄するように目を細めた春奈は、いまだに抱き合いながら話をしている2人を手のひらで仰いだ。

「彼女は名字名前さん。君たちの円堂監督が10年間恋しちゃってる相手なんですよ!」

子供たちはええっー!と大袈裟すぎるくらいの反応を示した。
フィールドに響いた大声は、もちろん2人にも届いたが、本人たちはどうかしたのかと首を傾げるだけだった。






貴方と未来の
話を








カオリさん
リクエストありがとうございました!
10年後の話とのことでしたので天馬くんたちを中心に据えました。風丸や豪炎寺たちの10年後と絡ませるべきかとも思いましたが、私が彼らの10年後を想像し難く構成ができませんでした。申し訳ありません。少しでも楽しんでいただけたならば幸いです。
夜間信号へのご訪問、いつもありがとうございます!



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