重たい瞼を開けると、白い天井が目に入った。視線だけを泳がすと、自分の手に点滴が延びている。

(謙也はどこにおるんやろ)

眠りにつきそうな意識の中でぼんやりと考えた。

手元に違和感を感じ自分なの目線まで手を持っていくと、そこに握られていたのはノート一枚分の紙をグシャグシャに丸められたもの。
だんだんと覚醒する。
ゆるりと動くようになった両手でグシャグシャになった紙を広げると、何やら文字が羅列されていた。目を凝らして文を読み解こうとしたとき、誰から宛てられた物か分かった。


白石へ

目は覚めましたか?
まだ体はしんどいでしょうか?

手紙を書くのは初めてなので何を書けば良いかわかりませんが、良かったら最後まで読んで下さい。


最初に謝らせてください。
ごめんなさい。
俺は白石を苦しめていました。本当にごめん。
白石の体調の悪さにいち早く気付いていたのは俺なのに、俺は最後まで白石を傷つけてしまいました。
俺を恨んでくれてもいい。俺を殺したいほど憎んでもいい。
白石が思うようにしてください。

それから今まで友達でいてくれてありがとうございました。
白石と友達になることができて、白石と共にいることができて、俺は幸せでした。

これから、俺は白石の前から消えます。分かっていると思いますが、それが一番の選択だから。

良かったら俺が消えても忘れないでいてやってください。




最後に、わがままなお願いをしてもいいですか?

もし、いつか会うことがあれば、俺のことを友達だと呼んでくれませんか。


もし、また廻り会うことがあれば、また好きだと言ってくれませんか。

俺はずっとあなたが好きでした。


さよなら、白石

         from 謙也



全てを読み終わり、目を瞑る。込み上げて来たのは膨大な悲しさ。
頬を伝うのは間違いなく涙。
先程静まり返っていた病室には嗚咽が響く。

さよなら、なんて言わないでくれ







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