小さい頃は、千里眼の力が見えすぎて床に伏せていた。気持ち悪かった。ただそれだけ。
テレパシーは意思がないと扱えない代物だったお陰であっても難は無かった。

ある日、床に伏せてる俺の所へ祖母が来た。祖母は、優しく頭を撫でてくれた。祖母が家に来た理由は右目の千里眼に封印術をする為。
ただ、右目の封印は半分の効力を下げることしかできない、右目の千里眼全部封印すると対価として両目の視力を失ってしまう、と祖母は幼い自分に分かるよう説明してくれた。
右目の視力は0。ただ残った千里眼の力があるせいでオートで数十メートル先は見えてしまう。しかし、効力が弱まったお陰で、年を重ねるに連れてコントロールができるようになった。
それからは、祖母に引き取られ封印術の仕方を教えてもらった。無事学校にも行けるようになった。


祖母は夢を見る。人の過去、現在、未来を。だが、そんなにちょくちょく見るものではない。稀に起こりうるらしい。祖母はよく夢の話をしてくれた。

ある日、祖母は夢を見た。
超能力者の少年の過去を。
少年は小さい頃から両親に疎まれて、やっと見つけた場所は自分の力のせいで失ってしまった。だが少年はその事に気づいてはいない。語る口調はどこか同情を帯びたものだった。

祖母はまた夢を見た。
超能力者の少年の現在を。
少年に友達が出来たらしい。友達は普通の少年。
だが、祖母の語る口調はどこか複雑そうだった。

祖母はまた夢をみた。
超能力者の少年の未来を。
普通の少年が亡くなった。少年の力のせいで。
ベッドに横たわる死骸に話し掛けるのは超能力の少年。話しかけて、話しかけて、帰りを待つかのように。
祖母はついに泣いた。


俺は大阪に行って早く2人を助けるよう祖母から言い渡され九州から飛んだ。
荷は重かった。自分のすることで1人の生死が決まる。
四天宝寺に入学して最初に感じたのは力を持つ者同士が感じる大きな違和感。
担任の先生の後を追うに連れて違和感はどんどん膨大になっていった。まさか同じクラスになるとは思わなかった。入った瞬間に目に入ったのは金髪。違和感の正体はこの少年。
祖母から少年に触れても、超能力者同士は考えを読み取れないと聞いていたので、少年に手を差しだした。まさに恐る恐るという表現が合っているだろう少年の動作を追いながら、ギュッと握った手を見つめる少年は酷く驚いていた。
ビンゴ。その瞬間確信した。

少年も俺の正体に薄々気づいていたらしく、昼休みに探し回っていた。
千里眼を微調整しながら、少年の姿を探す。ちょうど旧校舎と校舎は後ろ合わせで近かった。旧校舎にいた俺にちょうど見える位置に忍足謙也はいた。
すぐにテレパシーを送ってやると、テレパシー特有の頭痛に顔を歪めていた。最初からあまり送りすぎてはいけないな、と直感し伝えたいことは伝えてすぐに切った。

そのすぐ後に超能力の少年は普通の少年を連れてきた。
普通の少年を見て一瞬目を丸くした。普通の少年は思ったよりも進行が早い、もう限界に達している。すぐに、話さなければ。

謙也との対話を済ませ、2人だけになった瞬間、単刀直入に切り出した。勿論、目を丸くして驚いていたが、どこかもうすでに理解していたような部分があった。
普通の少年は自分が死ぬことより、忍足謙也を1人にすることを怖がっていた。
変な奴だと思った。
なぜ自分から離れれば良いだけなのにそこまで必死になる。一緒にいたら死しか待っていないのに。
ボロボロと涙を溢す男を見て、無性に悲しくなった。自分は助けることができるのだろうか。

いつの間にか、外は雨が降っていた。
まるで目の前で泣いている少年の心境を表すかのように。











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