「こんままじゃ死ぬたいね」

男は俺の目を捕えて言った。
2人っきりにしてくれと言われ、残った俺と千歳千里は会話を交わすことなく、いきなりそう告げた。
謙也ほどの違和感は感じないだろうが、千歳の異様な雰囲気は若干感じていたが、初対面の相手にいきなり死ぬだの言われたらさすがに驚く。

「いきなり…何いっとんねん」
「遅かれ早かれこんままやと死ぬっちゃ」
「なんで…」

心当たりが無いか、と聞かれると有るとしか答えられない。

一年前から、余り深く寝付けなくなった。
半年前から、急激に食欲が無くなった。
その後、体重が落ち始めた。

自分にいきなり訪れた異変に成長期だからと理由をこじつけていたが、最近では、立ってるのがやっとの日もある。ただの体調不良で無いことは薄々感づいていた。

「そげんこつなっりよった理由を教えてあげようかね」
「……」

この状況になった時点でだいたい予想はついていた。だが、聞きたくなかった。確信的意見を聞きたくはない。だが、聞かなければ俺はこのまま死ぬ。決心をして男の目を見ると、やはり出てきた言葉は残酷な物だった。

「忍足謙也が全ての元凶」

決心をしたはずなのに言葉を聞いた瞬間にどうしようもなく悲しくなった。

「そないな言い方せんでくれ…」
「そげんこつ言っても、ほんとのことたいね」
「なんで謙也が…」
「サイコメトリーの力の根源の話が何かしっとう?」
「……根源」
「人の生命力」
「……」
「本来超能力は普通の人間が持つべき力じゃなか。しかも謙也のは強力すぎかばってんそれを補う為に生命力を根源にしとう。謙也は気づいてなか。力がオートで作動して近き者の生命力を奪っちょるのは事実。根源はもうわかっとう」
「俺やろ…」

千歳は小さく頷き肯定を意味した。

「どないしたら謙也と一緒におれるんや?どないしたら俺は死なん?なんで謙也だけが…?」

必死だった。死ぬことが怖いわけではない。ただ単純に謙也と離れるのが怖かった。謙也は過去に亡くした祖父の話を一度涙ながらに語ってくれたことがある。謙也からまだその悲しみは取り除けていない。きっと今、俺が謙也から離れたらまた一人で泣いてしまう。自惚れと笑ってくれてもいい。自意識過剰だと馬鹿にしてもいい。
俺にとって謙也の存在は大きかった。

「なあ…どないしたらええんや?」

今の自分は情けないものだと思う。千歳は眉にシワを寄せ悲しそうな目をしていた。

「生き残る為には…謙也と離れるしかなかと」
「……」
「今ならまだ間に合う。謙也と関係ば経ちきって普通の生活にしよったら、体調もすぐ戻る。もちろん、死ぬこともなか」

どちらの選択も謙也から離れなければいけなかいという残酷なものだった。
せっかく仲良くなったのに。離れたくない。認めたくない。嘘だと言ってくれ。
思考がぐるぐる回る。

「謙也は…また1人になるんか」
「……」
「謙也を1人にしたない…けんやっを…」

情けない、悔しい、悲しい、寂しい、辛い

零れ落ちる涙は止まらなかった。












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