中学に入って新しく出来た友達は1人だけだった。でも、幸せだった。
1年のときに唐突な出会いがきっかけに仲良くなった。それ以降もずっと隣で居てくれた。じいちゃんと過ごしていた日々に似ていた。
この人とだけは離れたくない。
そう思ったのはじいちゃんの時以来だった。




中学二年に上がった頃、俺のクラスに1人の転校生がやってきた。中学生とは思えない程の長身にボサボサの髪と褐色の肌。九州から来たらしく博多弁で喋っていた。名前は、千歳千里というらしい。しかし、なぜか違和感を感じる。

「じゃあ千歳君は忍足の後ろの席に」

色々考えている内に、千歳千里はすぐ近くまで来ていた。違和感は増すばかりだった。出来るだけ触れないように体を避けようとすると、俺の席の近くで歩を止めた。

「千歳千里ばい。よろしく」

差し出されたのは"手"。
まさか、話しかけて来るとは考えてなかった上に手を差し出されるとは思わなかった。予想外の出来事に頭は混乱するばかりで、出された手を無下にすることはできず、おずおずと触れた。

「……!?」

驚いた。
千歳千里の顔を見るとにこり笑い返された。

違和感の理由が分かった。

──心が読めない

手を離すと何事も無かったように席に着いた。

この出会いで俺の人生が変わろうとは、この時全く思いもしなかった。









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