自分設定過ぎてわかりにくすぎる。
本気でよく分からない。
多分、シリアス。

 服脱いでますが、たぶん問題ない。なにもしないから。

***************
















 思い出す必要なんてないよ―。


数年前、風間が沖田と出会ったときに言われたことだ。

 彼は、風間を知っていると言って、けれど、風間は彼を知らなかった。

 

 沖田はそれでもいいという。
思い出す必要などないと。
だから、沖田は風間にとって他人のままだ。










 「千景、」

「ん・・・・・・っ!」


 誰もいない教室の中。
声を押し殺すようにして、浅い口付けを繰り返す。


「千景、千景」


見つめてくるのは、熱をはらんだ翡翠。

 

 (俺は、何故・・・この目を知っている?)



いや、違う。
確かに知っているが、
けれどそれはこんないろをしていない。








 ―そう、あの目はもっと・・・



暗く、濁っていて、

奥底にあったのは、数え切れないいくつもの感情。
抑え切れない殺意。


 それでも、確かに熱をはらんだあのいろは、

深い、深い、紅。
狂気に染まった、血色。



 記憶のなかにある彼の姿は血まみれで、
血に濡れた白髪が風に乱れるのも構わず、ただ、
「なにか」を求めていた。








 「沖、た・・・ぁ、」

丁寧に一つづつはずされていく釦。
長く、細い指が首筋をなでる。

 緩やかなその手つきは彼のものとは違っているのに、



 「千景、」


「好きだよ」


荒い息で、名前を呼ぶその声は、確かに彼のものなのだ。

 
 「うる・・・さいっ!」


風間は沖田のネクタイを乱暴にぬきとり、鎖骨に舌を這わせる。
 音を立てて吸い付き、赤に染めた。


「・・・僕がやったら文句言うのに、君も好きだよね?」

「ふんっ・・・ただの嫌がらせだ。
その位置は服では隠れないであろう?」


悪戯のあとを確認して、沖田は笑ってから小さなため息をつく。


 「ほんとだ。
・・・しばらくは第一ボタンまで閉めないといけないな」


「学園の風紀がよくなってよいではないか」


風間が鼻をならして言うと、沖田は少しだけむっとしたような表情になった。


「・・・千景、じゃあさ、」


「なん・・・っ?!」


腕をつかまれ、窓際へ追いやられる。
乱暴な手つきのせいで思いっきり頭を打った風間は、不満そうに眉をしかめる。


「っ・・・なんの、つもりだ」

「ね、千景。
この位置、外から見えると思わない?」

 
 窓際のこの場所。
カーテンがあるとはいえ、もしかすると他人に見られる可能性はあるだろう。


 「あるであろうな。
ならば、何故此処に?」


 どうせくだらないことだろうと思いながら、言い放つ。

 沖田は目を細めながら答える。


「うん?だって、さ。
学校内での不純異性交遊はだめだけど、
不純同姓交遊は問題ないでしょ?」


「は?」


「だから見られてもいいかなって」


呆れた。
そういわんばかりの表情を浮かべた風間は、沖田の腕を振り解く。

 たいした力が込められていなかった腕は、存外簡単に外れた。


 「何処行くの?」


沖田はそんな風間を見て楽しそうに笑う。

 風間はそれを無視して床に落ちた服を拾い、勢いよくドアを開く。
 そして教室を出る前に一言だけ、言う。

「死ね」


「うん。ばいばい」



会話がかみあってない、と思いながらすたすたと廊下を歩いた。


 歩きながら、思う。


 (矢張り、あれはあの者とは別人だ)

小さく頭を振る。




***************




ただ、静かに輝き、揺らめく。儚く、強い光。
その光をもう一度見ることは叶わない。










 幾つのときを、繰り返したのだろうか。

悠久の時を超えて、やっと巡りあえた彼は、全ての記憶をなくしていた。

 不思議と、何も思わなかった。

むしろ、それでいいとすら思った。

 
 「あのとき」のことを彼が思い出せば、きっとひどく怒るだろうし、傷つけることになるから。









 「千景・・・」

沖田は一人取り残された教室で小さく呟く。
 壁にもたれかかり、ずるずると座り込む。


「君は、何で・・・」


思い出してくれないの?


 思い出さなくてもいいと言ったのは沖田自身。
けれど、思い出して欲しいと思う心も確かに存在しているのだ。

 敵同士として出会った、あの頃。
はたして、互いの間に憎しみはあっただろうか?


 「わかんないや」


沖田の中にある記憶も時と共に徐々に薄れつつある。
そんな記憶を辿ってみるが、わからなかった。

 自分は、彼と何をしたのか

 何を話したのか

 何故、何をして傷つけたのか



 「いや、わからないんじゃなくて・・・」

忘れたんだ。


 少し前なら、自分が彼にしたことを憶えていた。
それはきっとひどいことで、だから、傷つけることになると思い、忘れたままでもいいと思っていた。


 「なんだったのかな」


言いながら大きくため息をつく。

いくら考えても、思い出せない。
いや、既に記憶から消えていることを思い出すことなんて、最初から無理な話だ。



 諦めて瞼を閉じる。





 







 






 好きだよ。

君が僕を憶えていなくても、何も思っていないのだとしても、僕はただ、


 君を愛してる。



「ごめん、千景」


 

「許して」




 呟いた言葉は、何に対してのものだろう。








粉ミルキーさまに捧げます。
すみませんでした。
すみませんでした。すみませんでした。