愛情がない殺伐とした感じで、暗いです。



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「随分あっさり倒れるじゃねぇか。なあ?鬼さんよお」

低くのどの奥で笑いながら、土方は侮蔑の言葉を吐き出す。足元に横たわるそれを踏みつける。風間の端正な顔に苦痛が浮かび上がって、それを見てまた笑う。
人外のものであることを示すような紅い瞳はまだ戦意も敵意も、意志も失っていない。

「風間、散々馬鹿にしてきた人間、いや・・・まがいものにやられる気分はどうだ?俺は楽しいんだが、てめぇは楽しめてねえみたいだな」

流暢に言葉を紡ぎ、風間の頭を掴んで自らの顔を見せるようにして引き寄せる。

「心配しなくても今からたっぷりと楽しませてやるよ」

それを聞いて、風間が僅かに目線を落とす。
土方はなおも笑いながら自分のほうへと向き直らせた。

「俺だけ見てろ」

状況によっては甘美な言葉だが、土方の声には少しも甘さは含まれていない。それでいて冷淡なその美貌には、酷く優しい笑みが刻まれていた。それが風間には不気味に思え、そして、彼は今から何かをするつもりなのだと悟る。

「ひじ、かた」

「ん?どうした?」

土方はまるで幼子をあやすような手つきで風間の頭を撫でる。薄気味悪い、と風間はその手を払おうとするが、両手が動かない今はそれも叶わない。仕方なくそれに関しては何も言わず、彼の目をまっすぐに見つめたまま、言う。

「・・・殺せ」

風間は悟った。彼はきっとなにかをするつもりだ。
それは多分、風間の誇りを貶めるようなことで、同時に―土方自身も、汚すことになるだろうと。
土方は誇り高い武士だ。彼がそんなことをするなら、きっとなにか訳がある。
止めなければいけない。そう思って言った。殺せ、と。
勝負は既についたのだから、後は風間が殺されればそれで終わりなはずだ。

―貴様は、何を迷っている?

「殺せ、だと?」

土方は口元だけで笑いながら、目を剣呑に細める。
風間は小さく息をのんだ。
桜吹雪と血溜まりの中で凄絶な笑みを浮かべるその姿はまさしく・・・鬼と呼ぶに、相応しいものだった。

風間はもう彼をまがい物と蔑むことは無い。彼は真の武士であり、一人の鬼だと認めている。けれど、今の彼はただの・・・

悪鬼だ。

「貴様は・・・っ」

風間は残る全ての力を振り絞り、立ち上がろうともがく。土方はそれを可笑しそうに見ながら、風間の身体を抱きしめる。

「風間。俺の顔をよく見とけよ」

笑って、言う。

「これがいまからてめぇを犯す男の顔だ」

「・・・ッ!」

土方の手が風間の首にかかって、唇が触れた。
口内をなにかが這うような感覚がして、風間は身を引き剥がそうとするが、風間の身体全体が土方の腕に抱きしめられていて逃れることができない。紅い瞳で強く睨みつけるが、土方はただ腕に込めた力を僅かに緩めただけだった。

ようやく唇が解放された頃には風間の身体からは力が抜けていて、土方の腕に大人しく収まっているような状態だった。
風間が荒く肩で息をしているのを見て、土方は感情の見えない表情で呟く。

「このぐらいでそれじゃあ、最後まではもたねぇか」

―まあ、別にいい。殺すために犯すんだからな。


風間の身体が地面に押し倒された。









それが愛ではないとして、けれど思えばそれが愛になるのでしょうっていう話。
意味わかんないですね。うん。
ラストはわざとぶったぎってます。後味悪くしたかった。
最初ははきだめにあげたたものを、加筆しました。
思ってたのとは違うけど・・・まあ、時間ないしとりあえず今はこれでいいや。また後日修正するか加筆するかします。