ジャーファルと、この国の王と、ヤムライハという魔法使いに囲まれて、私はシンドリア王宮の一室にいた。


「ソフィアは、アムテマルという病を知っているか?」


王にそう聞かれ、恐る恐る首を横に振る。


「知らない、か…」

「ソフィアさん、貴女はその、アムテマルという病にかかっている可能性が高いの」


ヤムライハにそう言われたが、はて、心当たりは見当たらない。
微かに首を傾げると、ジャーファルが後を引き継いだ。


「アムテマルとは、体が動物に変化する奇病です。ソフィアさんが白鳥に変化するのも、この病が原因だと考えられます」

「え……」


思わず声を上げてしまう。だって、あまりにも驚いたから。
自分のこの、気味の悪い体質が、病気?


「驚くのも無理はないわ。でも、これは病なの。治す方法だって、きっと見つかるわ!」


ヤムライハが興奮気味に言葉を紡ぐ、が。


「と言うことは、今現在治療法はないってこと?」


私の小さな声が部屋に響き、しいんと静まり返る。

また余計な事を言ってしまった。

今度は何をされる?殴られるか、それとも蹴り飛ばされるか。
そう思うと、視線が一ヶ所に定まらなくなる。


「……ぃ」


訳がわからない。ここは暗い。ここは狭い。ここは怖い。ここに居たくない。痛いのは嫌。苦しいのも嫌。こんな真っ暗で、狭くて、怖いところになんか居たくない。


「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、私が悪いですごめんなさい、ごめんなさいもうしません、許してください、ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい………」


だれか、だれかだれかダれかダレかダれカ、

………ダレカ、タスケテ、コワイヨ…



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