キラリと光る、魔法の指輪


今日はエミリの誕生日。服をプレゼントしにきてくれた友人と部屋でお茶を飲んでいた。


「本当に…悲しすぎるよね、私」


話のネタはもっぱらエミリの愚痴だが。


「別にいいんだよ?彼女とはいえただの部下なんだから。しかも他部署の」

「ただのって…彼女の時点でただのっておかしいでしょ」

「政務官様に誕生日覚えてもらえるとか、あまつさえプレゼントもらえるとか思ってないよ?だけどさ…」

「聞いてないね、人の話。まあいいけど」

「八人将の皆さんとも王様ともそれなりにお付きあいしてるつもりなのに、誰からもなにも無いってどゆこと!?ねえ、どーゆうことー!?」

「知らん」


バッサリと一刀両断した友人に、がばりとなだれかかる。


「ありがとう、ありがとう我が友よぉぉ!」


唯一誕生日を祝ってくれた友人に頬擦り。
嫌そうに眉を寄せながらもエミリの好きにさせてくれる友人が輝いて見えた。

さっきも言った通り、仕事命の激にぶに誕生日を覚えてもらおうなんて思ってない。だが、女性のことには目ざとい王様改め七海の女たらしに忘れられるのは、けっこうきつい。一言ぐらいあったっていいのに。


「…今日は潰れるくらい飲んでやろうかな」

「明日仕事でしょ」

「エミリ」


本気で酒瓶を持ち出してくると、扉が開いてジャーファルが顔をだした。


「あれ、ジャーファル。どうしたの?」

「書類にミスがあったので、書き直しをお願いできますか」


別に期待なんかしてないけどね!


「あーハイハイ。行けばいいんでしょ、行けば」


憤然とした表情でジャーファルを押し退けて部屋からでる。
友人の「頑張って〜」という呑気な声が追いかけてきた。


「エミリ?」

「なに」

「怒ってるんですか?」

「別に!」


ずんずん歩き、仕事部屋のドアを開けると、


「エミリ!」

「ぐはっ!!」


ピスティが飛び出してきた。
何気にお腹にクリーンヒット。恐ろしい子…。


「ど、どうしたの…」


そう声をかけた瞬間、「誕生日おめでとう!!」の大合唱。
驚いて目を見開くと、室内にはエミリの所属する部署の上司、先輩、後輩が勢揃いしていた。
そして、何よりも目を引くのが、中央を陣取った王様と、その横にズラリと並ぶ八人将の方々。


「は…え?ナニゴト?」

「誕生日おめでとうございます。エミリがこの世にうまれてきてくれて、本当に感謝してますよ」


そう言って、ジャーファルはエミリの手を取り、近くにある席まで案内した。


「ちょ、ジャーファル、これ…」

「ちょっとした誕生日パーティーです」


王様と八人将まで出張る誕生日パーティーがあってたまるか。


「いや!仕事は!?皆さん仕事どうされました!?」

「俺はこの日のためにきちんと終わらせたぞ」


どうだえらいだろう、そう胸を張る王様に、肩を叩かれた。


「エミリの友人もすぐに合流することになってる。こんなめでたい日は年に一度だ。悔いなく楽しめよ」


え、え!?
エミリが混乱している間に友人も合流し、王様のカンパイ!という掛け声とともにパーティーはスタートした。

皆が口々にお祝いの言葉を言いにくる。
これまで生きてた中でこんなに素敵な誕生日はあっただろうか。
誕生日と言わずとも、こんなに多くの人が祝ってくれることなんてなかった。


「エミリ、楽しんでますか?…エミリ?」


ジャーファルに声をかけられて、エミリは濡れた頬を上げた。


「っ、ありがとう、ございます。こんなに豪華で、素敵な誕生日、はじめてです」


その声は全員に聞こえたようで、しいんと静まり返った。
その中、王様が自信に満ち溢れた堂堂とした姿で言った。


「当たり前だろう?エミリが皆に良くしてくれるから、皆もエミリに喜んでもらいたくてしたものだ」

「ありがとうございます…!!本当に、本当に嬉しいです!!」


感動の涙を拭いながらお礼を言うと、皆がにっこりと笑顔になった。
ああ、私はきっと、世界一の幸福者だなあ。


「エミリ、感動しすぎです」

「だって、私のために祝ってくれて…嬉しいんだもん。これ以上に幸福な事が他にある?」

「最初の膨れっ面はどこ行ったんですか」

「そ、それは…」


口ごもると、ジャーファルはエミリににこりと微笑みかけ、袖の中から小さな箱を取り出した。


「ジャーファル…?」

「誕生日プレゼントです」


そう言って開いた箱の中身は、灯りに照らされてキラリと光る……


「っ!?」

「エミリ、私と共に生きて下さいませんか?」


照れ臭そうに言うジャーファルに、エミリは抱きついた。



キラリと光る、魔法の指輪

(疑ってごめんなさい!ありがとうジャーファル!!)
(何の事かわかりませんが…必ず幸せにしますよ、エミリ)



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