明日世界征服 | ナノ
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「どうしたたまき、その髪型は。綺麗なポニーテールじゃないか」
「パパあのね、デイダラのおにいちゃんがね、やってくれたの!」
「芸術的だろ、うん!」
「たまきによく似合ってるよ、可愛いな」
「ほんと?じゃあママに見せてくるね」

元気良く向こうに駆けていく愛娘を見ながら自然と柔らかい笑みが零れてしまう。日に日にいとおしい妻に似てきたたまきは、暁のメンバーにも愛情をたっぷり注いでもらっているようだ。心配事がないわけでもないが、ありきたりな日常にぽつりと溢れた幸せを感じられずにはいられない。幸せを噛み締めながら、隣で満足げな表情を浮かべるデイダラを見やる。

「いつも面倒見てもらって悪いな」

俺がそう言うと笑顔を崩さずに首を横に振るデイダラ。デイダラはよくやってくれている。一番年が近いせいもあるのか、たまき自身もよくデイダラに懐いているし、デイダラもその器用な手先を生かして粘土でおもちゃをつくったり髪型を可愛く仕立てたり。彼だって一歩アジトから出れば犯罪者として人を殺めることも少なくないのに…全く所帯じみたものだ。ああ、それは俺もか。

「ちょーっと前までこんな小っちゃかったのにな、うん」
「あっという間だな。こうやって年を取っていくんだろうか」
「コマチが妊娠したって聞いたときはどうなるかと思ったけど、幸せそうでオイラ安心したよ」

そんなデイダラの一言に、俺だって悩んださ、とぽつり呟くように答える。
何年も前に里に置いてきたコマチを犯罪者にして暁につれてきた挙句、不本意ながらも孕ませてしまったと知った時、ショックで思わず眩暈がしたのを覚えている。犯罪者集団の間に生まれ落ちる子供を果たしていったいどう育てて行けばいいんだと随分塞ぎこんだものだ。普通の子供のようにアカデミーに通わせることも友達と遊ばせることも、満足にアジトの外に出してやることさえできないというのに、それで生まれてくる子供は幸せなのだろうか。コマチを里に帰そうにも、もう既に彼女は抜け忍だ、そうなると子供も彼女も世間の目に耐えながら生きていくしかない。それでも堕ろすつもりは毛頭ないのだと言い張ってヒステリックに泣きわめくコマチに頭を抱えたのも、もう大分昔のことになってしまった。

そう、今思えば。コマチの腹が膨れていくにつれて次第に柔らかな雰囲気になっていった暁。面子の多くが親や家族の満足に愛情を受けずに育ったのだがその反動だろうか、親である俺とコマチにも負けないくらいの愛情を注いでくれるものもいるのだ。確かにあまり外に出すことは出来ないが、たまきもそんな小さな世界の中で以外にものびのびと育っている。いつでもニコニコと笑顔を振りまく、素直で可愛らしい女の子になってくれた。杞憂だったのだと、こんな幸せなことが果たして他にあるだろうか。

「でいー」
「おお、おかえりたまき!」
「こんどはね、パパとおんなじ風に結んでほしいの」
「おっし任せろ、うん!」

ひょこひょこと無邪気に帰ってきたと思えばデイダラの膝の上で大人しくし始めるたまき。俺とお揃いの髪型にして欲しい、か。デイダラの横にゆっくり腰を下ろして、白く輝くように滑らかな娘の頬に手を伸ばす。くすぐったそうに目を細めるたまきを見る度に目頭が熱くなってしまうのだから、俺も随分と間抜けになったもんだ。






(あらあら今度はパパと同じ髪型ねたまき)
(またデイにやってもらったの!)
(デイダラお兄ちゃんのこと好き?)
(大好き!)
(パパとどっちが好きなの?)
(か、勘弁してくれコマチ。俺が立ち直れなくなる)