「たまきもお団子食べる?」 「うん、おだんごたべる!」 「じゃあ串からとってあげるね…はい、あーん」 「あーん」 おいしい?と聞けば満面の笑みで頷いてくれる私の愛娘。薄紅色の頬を膨らまして口をもごもごさせる様子が思わず見惚れてしまうほど可愛くてしばらく黙って眺めていると、たまきは私にその小さな手を伸ばした。 「わたしもパパみたいにたべたい」 「え?」 「そのまんまパクってたべたい!」 イタチがお団子を食べる手を気まずそうに止めた。 たまきは串に刺さったままのお団子を食べたいということだろうか。いや、でもそうはいかない。万が一のどに串が刺さってしまったら大変。駄目よ、と言い放とうとすると、たまきの向こう側に座っていたイタチが娘の名前を呼んだ。 「たまきにはまだ早い。危ないぞ」 「なにがあぶないの?」 「喉に串が刺さったらすごく痛いんだ」 「パパはのどにささったことあるの?」 「ハハ、そうだな、あるかもな」 イタチは顔をほころばせ、自分の手に持っていたお団子を一つ串からとって、たまきの口元へ運んだ。たまきの笑顔はさっきと同じように満開の笑顔を浮かべた。 三人でこうして幸せを満喫していると昔のことが何故だか思い出される。 大好きな幼馴染のイタチを追いかけて里を抜けたのは何年前だったか。今考えればあの時の私って本当に子供。昂る感情に身を任せて犯罪者の集団に飛び込んでいくなんて、今の私じゃ絶対できない。だからと言って後悔してるわけじゃないけれど。 「たまきは、お団子好き?」 「うん、すき!」 「そっかそっか」 その艶やかな髪は間違いなくイタチ譲りだ。イタチのほうを向いたり、私のほうを向いたりするたびにサラサラと揺れるその豊かな髪を少しうらやましく思った。 「きれいな髪ね、イタチそっくり」 「そうか?」 「そうよ、まつ毛が長いのもイタチに似たわ」 「お前だって十分長いだろう」 イタチはそっと私の顔に手を伸ばし、まつ毛に触れた。 くすぐったいわイタチ!クスクスと笑っていると彼は気をよくしたのか、頬に指を滑らせ曖昧な力加減で撫でまわす。なんだかこういうの久々だ。ふと、昔に戻ったような気がして胸が熱くなったが、イタチと私の間に座るたまきが心底不思議そうな顔で私の顔を見ているのに気が付き、慌てて彼の手を払いのける。いけないいけない、子供の前でした。 「くすぐりあいっこしてるの?」 「え、まあ、そうね」 「ふーん」 深く追求しないたまきの様子にこっそり胸を撫で下ろすと、切々とした哀愁を孕んだ視線をイタチから感じる。最近コマチ冷たいな、とついこの前、寂しげにぽつりとこぼしたイタチを思い出し、ごめんね、と声に出さず目配せをした。 「たまき、おいで」 イタチはそう言って、串を懐紙の上に置き、たまきを抱き上げる。膝の上に置かれた娘は嬉しそうな顔をして、ひっきりなしに足をバタバタさせていた。そんな二人の様子があまりにも微笑ましくて目を細めて見守っていると、突然イタチが環の目元を覆う。 「イタ…」 その瞬間、私の唇に確かに広がる感触。キ、ス…? 触れるだけの幼いキスを終えて、驚いてイタチをみると、彼は少し眉を潜め、ふいっと目を反らした。照れてるらしい。 「イタチらしくなーい」 「…っ」 アハハと暢気に笑い声をあげる私が気になるのか、たまきがイタチの腕の中で目隠しをされながらジタバタしている。私の笑い声は静かなアジトの中、やはり暢気に響いていた。 (イタチ、今度二人きりで出掛けよっか) (…出掛けるより、部屋で二人ゆっくりしたい) (えっち!) (なっ!?) |