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遅くなっちゃった……


今日は任務が長引いてしまった。大名の暗殺という嫌な任務だった。忍びとて人間だから簡単には人を殺めることは出来ないし、酷い罪悪感に襲われる。ああもう、思い出したくもない。

とにかく急いで家に向かう。愛すべき人を思い浮かべて。

よりによって付き合いはじめて1年の記念日に任務なんて。二人でご飯でも食べにいくつもりだったのにこんな時間じゃ無理か……。テンゾウ怒ってるかな……まずは謝らなきゃ。

急いで家に着くと窓に明かりが付いていない。まさか寝ちゃった?1年に一回のこんな日にそんなのって寂し過ぎない?

少しの不安に駆られつつ、のドアを開けるとやはり家のなかも真っ暗だった。

「テンゾウ……?」

呼び掛けにも答えがないので恐る恐るリビングに繋がる廊下を進む。

と、その時。

「……ひっ!?」

背後からいきなりがばっと抱き着かれて心臓が止まりそうになった。

「てんぞ……」

び、っくりしたぁ……怖いなあもう。

視界の端に、見慣れた銀色のヘッドギアがちらついたので、その正体がテンゾウだとわかった。

「コマチ……」

後ろの声にただいま、と言えばうなずくのがわかり、とりあえず怒ってはいないんだなとほっとした。

「テンゾウ、遅くなってごめんね?ご飯食べにいく約束、駄目になっちゃった」

「うん、そんなことは大丈夫だけど」

心配した、と抱き締める力が強くなったのが嬉しくてつい口元が緩む。


「コマチ、怪我とかない?」

「大丈夫だよ」

一度手を離してもらい、彼の方に向き直るとまた抱き締められた。珍しいな、いつもこんなに甘えてくる人じゃないのに。

「テンゾウ、一年間ありがとね」

「それなんか別れの台詞っぽいよ」

そうかなあ、テンゾウが言うならそうなのかも。

「じゃあなんだろ……これからもよろしく?」

「ベタだなあ」

「じゃあ何て言えばいいの」

膨れっ面で答えを求めると少し笑ったテンゾウがこほんと咳払いして予想もしなかった素敵な言葉をくれた。





――――結婚して下さい。






素敵なプロポーズ、だけど









それってベタなんじゃ、


(しかしながら照れつつもやっぱり嬉しくなってしまうのです)





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もかさまから相互記念としていただいちゃいました!
ベタベタなテンゾウさんがヤバいです、もかさまの書く少しヘタレ気味なテンゾウが堪らなく好みです…!
相互リンク、そして素敵小説をありがとうございました!