FF6 | ナノ  彼女との関係を変えることはずっと保留にしている。変えようと思えば出来るのだが、それは彼女の本心が許さないのだろう。
 立場上仕方ないことなのかもしれない。当たり前だ。私は国王で、彼女は近い位置にいるがただの家臣だ。
 彼女の役目は私を護り、フィガロの剣となる事。彼女はそれで満足だと言う。私のために戦って、傷付いて、仮に命を落としたとしても誉れだと嬉しそうに語ってくれた。レディが自ら危険を冒すのは忍びないのだが、私には止める事はできない。

 私と彼女の間には誰にも知らない、マッシュにもさえ話していない秘密がある。
 
 今はまだ語るのは割合しておこう。少なくとも、今の彼女はそれが鎖となって縛り付けている事は確かだ。本来ならもっと、平和な世界で穏やかな毎日を送れたはずなのに、俺が引きずり落としたのだから。

 彼女が私に向ける想いは執着にも似た感情だ。必ずしも俺を一人の男として見ている訳ではないのは知っている。ただ憎からず想ってくれている事も把握していた。手を伸ばせは届く距離にあるのに届かない。子供の頃と比べると大分溝が深まってしまったように思う。
 では俺は彼女を一人の女性としてみているか? 答えは否。だが長い付き合いで情が移った部分もあるのだろう、カテゴリとしては特別な位置にいるのは間違いなかった。
 彼女には幸せになってほしいと思う。仲間と共に帝国に立ち向かう旅を始めてから見かけるようになった城では見られない彼女の穏やかな顔。そんな笑顔で居られる毎日を送って欲しいと心から。だが、その思いと反して、その役目は他人ではなく自分でありたいと、大分前に抱いた感情である事も記憶に新しい。

 二人きりの彼女はとても穏やかで凛々しく自分の目に映った。そんな彼女の知らない一面、特に自分には見せない激情はとても、俺の脳裏に焼きついていた。更にその激情のきっかけが自分であった事が余計に俺の心を揺すり、己が危険に晒されていながらも嬉しく思ったのは今でも覚えている。

 彼女はとても従順で優秀な私の懐刀。
 もし、彼女を他のレディと同じように口説き、甘い言葉を囁き、この手に落として甘やかしてみるとどうなるのだろうと興味はある。まぁ、主が望むなら何でもこなしてくれるのだろう事は目に見えていたが俺が確かめたいのはそれではない。恋に溺れ、愛を求め、彼女の女という全ての部分を曝け出させて、愛し愛される喜びを感じさせてみたいのだ。
 そこに行き着くまでにはまだ時間が足りないと思う。今は成すべきことがあった。

 私は国王だ。優先順位など等に決まっている。全てが終われば、きっと、もしかしたら。
 
 彼女は私の后になるのは御免だとはっきり言ってくれた。私の恋人の真似事のような戯れに面白がって付き合ってくれているのも、国王と家臣という隔たりがあるからこそ割り切っているのだろう。君の素はどんな姿なんだい? 

 君を自由にしたいのに、幸せであって欲しいのに、一種の好奇心からずっと側において縛り付けている、私はとんだ嘘つきだ。きっと俺の中にある彼女への想いはまっすぐで純粋なものではない。もっとどろどろとして足を絡めとるような、醜いものなのだろう。

 もし、俺の本心を彼女が知ったのであれば、どうするのだろう?
 それを想像したら何故か、浮き足立つような心地になった。

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お題にそって陛下と家臣の関係でエドガーが嘘をつくのはどういうのだろうとちと悩んだ。
何気にゲスい感じの陛下。子供のような独占欲でヤンデレ一歩手前みたいなテイストで。
話の中にあった過去話はおいおい設定固めて生きたい所存。いつになるのやら。
エドガーが一人称を俺と私と使い分けるのは、国王としての面と個人としての面でと思うとなんか萌える。
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