私のかわいい大切さん | ナノ
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -


 食べさせてあげる

今日はカタクリの島にダイフクとオーブンが遊びに行くという話をペロスペローからナナシは聞いた。
最近は仕事が忙しかったそうで三人が集まるのは久しぶりだそうだ。そうなると、お姉ちゃんも行かなくちゃー!となるわけで、ナナシは風を操りカタクリの島へと凄い速さで飛んで行った。

もともとカタクリの島に近い場所にいたナナシは昼前にはカタクリの屋敷に到着した。
カタクリが仕事部屋にいると聞いたナナシはすぐにその部屋に向かい扉を開けようとしたのだが、ドアは勝手に開いた。

「ナナシ姉どうした?」

見聞色で未来を見たカタクリが扉を開けてくれたようだ。ナナシは嬉しそうにフフフッと笑った。

「今日は……」
「そうなのか」
「……」

今日は三人が集まるって聞いたからお姉ちゃんも一緒に遊びたくて来たのよーと言う前に未来を見たカタクリが答えてしまったので、ナナシはぷくーと頬を膨らめて怒りだした。

「もー!カタクリは……」
「ああ、わかった。やめる」
「やめてないじゃなーい!」

ナナシはカタクリと会話がしたいのだ。なのにカタクリはいつもこうやって見聞色で未来を見て一人で話を進めてしまう。
それが嫌なナナシはポコポコとカタクリを叩いている。カタクリは本当にもうやめるとちょっと笑いながら言った。

「……」
「ほら、やめている」
「ダイフ……」
「午後から来る予定だ。オーブンもな」
「いーやー!!!」

やっぱりカタクリが未来を見てしまうのでナナシはもーもーもー!と繰り返し言っている。

「牛みてェだな」
「もー!誰のせいよ!」

ナナシはカタクリの頬を両手で力一杯引っ張った。もちろん覇気は使っていないので、カタクリの頬はびよーんと伸びるだけで痛くはない。
カタクリはフッと笑う。これは姉とじゃれたい弟のちょっとしたイタズラ心なのだ。もちろん弟や妹が見ていたら恥ずかしくて出来ない事なので少し久しぶりだった。

「お姉ちゃんせっかくドーナツ作ってあげようと思ったのに!もー作ってあげなーい!」
「え!?わ、悪かった!ドーナツ作ってくれ!」

カタクリは満足したのかもう未来を見ていなかったようで慌てて謝る。ナナシはそれがわかったようでフフッと笑いカタクリの頬から手を離した。

「何個食べたい?」
「たくさん」
「食いしん坊さんなんだからァ」

ナナシは楽しそうに笑いながらちょっと待っててねーと行って部屋を出たのだった。





しばらくして扉の前からカタクリーと呼ぶナナシの声が聞こえたので、カタクリはすぐに扉を開けにいった。

「ドーナツお待たせェ」

大量のドーナツを持ってナナシが戻ってきた。

「時間かかっちゃってごめんね?」
「いや、こんなにたくさん大変だったろう?ありがとう」
「弟のためならなんのそのー♪」
「そうか。重いだろ?持つ」

カタクリはドーナツを受け取ると部屋の中へと入ったのでナナシも後に続いた。

「でも、もうお昼ご飯の時間になっちゃったし、食後のデザートにする?」
「いや、ドーナツを食べてから昼飯にする。食後のデザートはまた別に何か食べる」
「本当に食いしん坊さん」

ソファーに座ったカタクリの頬をナナシは笑いながらつついた。
そしてカタクリは口を隠したままドーナツを食べようとしたので、ナナシはふわふわと飛んで部屋の鍵をかけるとカタクリの隣に立って口元を隠しているストールを取っていく。

「鍵をかけたから、これなしね」
「別に着けたままでいいんだが……」
「お姉ちゃんはカタクリが美味しそうにドーナツを頬張ってる所が見たいのー」

そう言いながらナナシは外したストールを丁寧に畳んでソファーの端に置くと、ドーナツをよいしょっと言いながら持ち上げてカタクリの口の前に持っていった。

「はい、あーん♪」
「か、勘弁してくれナナシ姉」

カタクリは頬を赤くしてナナシのドーナツを手で押し返す。
誰も見てないとはいえこれは恥ずかしい。それにナナシは兄弟に楽しかった事や嬉しかった事をすぐに話してしまう。さっきのやり取りくらいならいいが、姉にあーんしてもらったなんて話を弟や妹にされたらと考えるとカタクリは羞恥心で死ぬと思った。

「何照れてるのよー!兄弟でしょー?」
「だから恥ずかしいんだ!」
「誰も見てないのにー?」
「で、でもナナシ姉はこの話を弟や妹にするだろう?」
「カタクリがして欲しくないならしないわよ?」
「……」
「カタクリー?」
「……ほ、本当に言わないか?」
「ええ!はーい、あーん♪」
「……」

カタクリはナナシの持っているドーナツをパクリと食べた。

「どう?美味しいー?」
「う、うまし」

ナナシはそれはもう嬉しそうに笑ったので、カタクリは黙っていてくれるなら、こういうのもたまには良いかもしれないと思った。

しばらくするとダイフクとオーブンがやって来て、おーい開けてくれよーと扉を叩いてきた。ナナシはドーナツを置いて鍵を開けに行く。
二人になら見られても構わないのでカタクリはそのままだ。

「いらっしゃーい」
「あ、ナナシ姉だ」
「久しぶりだなナナシ姉」
「久しぶりねー!ドーナツあるわよー」
「え?食べる食べる!」
「超食べる!」
「フフ!二人も食いしん坊さん!私が食べさせてあげるからねェ!」
「えっ!?」

二人もこれはやっぱり恥ずかしいので、いやいやいやと首を横に振っている。

「なんでー?カタクリは食べたわよー?だから二人にも絶対あーんってするのォ!」
「お、おいナナシ姉!?言わねェ約束……」
「え?二人もカタクリにとって弟認定だったの?」
「い、いや、違うが……」
「ププッ!お前食べさせてもらったのかァ?」
「良かったなァカタクリー。ププッ!」

ボッとカタクリの顔が赤くなる。
ナナシは三人のやり取りを見て仲良しねェなんてのんきに思いながら、ドーナツを二つに割ってダイフクとオーブンの口の前に持っていった。

「はい、あーん♪」

召し上がれーとナナシはにこにこと笑っている。
これはいくら断っても引かない顔だとダイフクとオーブンはわかったのか、ドーナツを大人しく食べた。

「美味しい?ねェ美味しい?」
「あ、ああ」
「う、うまい」
「フッ、いい歳して」
「お前が言うな!!!」

ぎゃーぎゃーと騒いでいる三つ子を見ながらナナシは楽しそうに笑っていた。















「お、おい、ナナシ姉!弟や妹には秘密だぞ!」
「わかってるわよー」
「絶対だからな!!」
「オッケー!」
「本当にわかってるか!!?」
「もー!わかってるわよー!!あ、でもォペロスペローとコンポートには言ってもいーい?」
「それもダメだって!!!」










ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
女兄弟同士ならあーんとか恥ずかしくないだろうけど、流石に仲良くても姉と弟なら恥ずかしいかなって思います。

[ 戻る ]