おやすみなさいのキス
明日はリンリンがお茶会を開くので、兄弟たちは皆ホールケーキアイランドに集まっていた。
ナナシは兄弟たちが皆いるのが嬉しくてたまらず、ずっと笑いながら皆の回りでふわふわと飛んでいる。
「今日はなんていい日なのかしら!」
そう言いながらナナシは兄弟たちの頭を撫でていく。空を飛べるナナシは背の高い兄弟たちの頭だって簡単に撫でれる。
もう大きい兄弟たちは少し恥ずかしそうにしているが、長女が幸せそうなのは嬉しいので黙って頭を撫でられ続けていた。
お茶会の準備を進めていたらあっという間に夜になってしまい、幼い兄弟たちはもうベッドの中だ。
大きい兄弟たちもそろそろ寝るかと皆部屋に戻ろうとし始めた。
「あ、待って!」
それをナナシが止めた。
「おやすみなさいのキスがまだよ!」
その言葉に大きい男兄弟たちはぎょっとする。
「い、いやいや、ナナシ姉?」
「なァに?」
「お、おれたちにも言ってんのかァ?」
「もちろんよ!」
「も、もうおれたちガキじゃないぞナナシ姉?」
「でも弟よ!」
カタクリ、ダイフク、オーブンの言葉などナナシには関係ない。だって何歳になっても弟は弟なのだから。
ほら並んでねーとナナシは皆を整列させる。女兄弟たちは別に嫌ではなく、むしろ嬉しそうで進んで並び順番におでことか頬にキスをされていく。
一応年下から順に並んでいたようで、女兄弟最後のコンポートのおでこにナナシはキスをすると男兄弟たちの方を見た。
「はい!次はあなたたち!」
男兄弟たちだって別に嫌ではない。でも流石にもう姉にキスされるなど恥ずかしすぎる歳だ。
大好きな姉が悲しむ事はしたくないから誰も無視して帰るなんて事はしないが、皆なかなか前に出る事は出来ない。
ナナシは悲しそうな顔をする。
「お姉ちゃんの事が嫌い?」
その言葉はグッサーと男兄弟たちの胸に刺さった。皆アワアワと慌て出す。
「き、嫌いじゃない!嫌いじゃないよ!大好きだ!」
「よかった!じゃあ、クラッカーからどうぞー!」
「え!?あ、いや、あの……あ!ペ、ペロス兄は!?」
ナナシの少し後ろに実はずっと立っていた長男ペロスペローをクラッカーは指差した。
「いやいや、私は長男だぞ?」
「ほ、ほら!ペロス兄だってしない……」
「一番最後にゆっくりしてもらうんだぜェ!ペロリン♪」
「してもらう方向かよ!!!」
ペロスペローは最初からしてもらう気満々だったようだ。
「ほら、お前たち!ナナシお姉ちゃんが眠れねェだろ!年下から順番に並べ!」
もうキスから逃れる事は出来ないとわかった男兄弟たちは順番にナナシの前に並び始めた。
キスが終わった男兄弟たちは皆顔を赤くしながらブツブツと何か言っているが、どこかその顔は嬉しそうだ。
「皆お姉ちゃんに甘えたいくせに素直じゃねェな。ペロリン♪」
そう言いながらペロスペローは帽子を取りナナシの前に立った。
ナナシはそっとペロスペローのおでこにキスをする。
「はい!これで全員ね!」
ナナシは嬉しそうに笑った。そんなナナシへとペロスペローは手を差し出す。
「お姉ちゃんお部屋までエスコートするぜェ」
「まあ!ありがとうペロスペロー!」
ナナシはストンと地面に立つとペロスペローの手の上に自分の手を重ねた。
「おやすみなさい。私のかわいい大切さんたち」
「明日寝坊するなよお前たち。ペロリン♪」
そう言いながら部屋を出ていく長女長男を見ながら誰かがボソリと呟いた。
「ペロス兄いいな」
それは誰もが思っていたようで、皆うんうんと頷いていた。
「なァお姉ちゃん?」
「なァに?」
「明日のお茶会やっぱり参加しないのか?」
「ええ、しないわよ」
「ママから一番遠い席でも?」
「ええ。ごめんね」
「……お姉ちゃんがいないのは寂しいな」
「フフ。また終わったら会いましょう」
「ああ、そうだな。おやすみなさいナナシお姉ちゃん。ペロリン♪」
「ええ、おやすみなさいペロスペロー」
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姉さんとかもいいですが、ペロスペローにはお姉ちゃんって言わせたい!