これは恋ではありません | ナノ
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 06:念願のコーヒー

喫茶店の開店二時間前。ナナシは店内の掃除とお茶やお菓子、軽食の準備をしていた。ある程度準備が済むと、店の前の掃除を忘れていた事を思い出しほうきを持って外へと出た。

そして外に出た瞬間カタクリと鉢合わせた。
カタクリは固まって動かなかったのだが目だけは不自然に泳いでいて、ナナシはクスッと小さく笑ってから頭を下げた。

「おはようございますカタクリ様。こんなに朝早くからどうしたんですか?」
「そ、の………さ、散歩、だ」

嘘である。カタクリは開店まで隠れて待っていようと思い来た所だった。
でもこんなに早くから待とうとしたなんて恥ずかしくて言えるわけもなくカタクリは適当に誤魔化した。

「そうでしたか。今日はお天気もいいしお散歩日和ですもんね……まだ早いので人も少ないですし、お散歩ごゆっくりお楽しみくださいね」

そう言ってにっこりと笑いながら会釈せれたらカタクリは頷くことしかできない。

「か、開店時間になったらまた来る」

散歩と言ってしまったのでこのままここにいるのは不自然だと思ったカタクリは歩きだす。ナナシはカタクリの背中に向かってお待ちしておりますと頭を下げていた。

「……ナナシさんは今日もカッコイイ」

一人ボソッと呟いたカタクリはとりあえず前へと進んでいった。

そのまま島を適当に歩き回っているといつの間にか喫茶店の開店時間十分前になっていて、カタクリは早足で喫茶店へと戻った。





「あ、カタクリ様いらっしゃいませ。お待ちしておりました。どうぞこちらのお席へ」

カタクリが喫茶店のドアを開けるとナナシに笑顔で迎えられたので、カタクリは待っていてくれたのかと感動しながら頷いた。

「今日もご注文はお任せでよろしいですか?」
「ああ。あ、あと、その……」

ストールを握り締めながらモゴモゴと言っているカタクリにナナシは耳打ちした。

「今日はカタクリ様のためにコーヒーに合うケーキも作りましたので、そちらと一緒にお持ちしますね」

そう言ってナナシはウインクをしてカウンターへと戻っていく。残されたカタクリは両手で顔を覆い嬉しさで悶えていた。

ナナシは準備をしていたのかコーヒーとケーキはすぐに運ばれてきた。コーヒーはとてもいい香りがする。

「どのコーヒーを出すか色々悩んでしまい……結局私が一番気に入ったブレンドをご用意させていただきました。カタクリ様のお口にも合えば……」
「絶対に合う」

ナナシが言い終わるよりも早くカタクリは言ったので、ナナシはクスクスと笑った。何か変だっただろうかとカタクリは心配になりそわそわと落ち着かない様子だ。
ナナシは頭を下げてにっこりと笑った。

「ありがとうございます!そう言っていただけると嬉しいです。それではごゆっくりおくつろぎください」

ナナシがテーブルを離れると、カタクリはコーヒーのカップに手を伸ばしゆっくりと飲み始める。

「……うまい」

自然に声が出た。それくらいそのコーヒーは美味しいものだった。





カタクリがくつろいでいると昨日の女性二人がやって来た。カタクリはこの二人を同じファンとして勝手にライバル視しているので、おれだけナナシさんに特別に用意してもらった最高にうまいコーヒーだぞ!羨ましいだろう?と心の中で呟いていた。

ナナシは女性達に気が付くといらっしゃいませと笑顔で迎えている。

「ナナシさん来ましたー」
「ありがとうございます」
「今日は私達プレゼントを持ってきたんです!」

そう言うと女性達は鞄からお菓子を取り出した。

「わあ!お菓子ですか?」
「はい、そうです!」
「ナナシさんの作るお菓子にはとても敵いませんけど、私達頑張って作りました!」
「ありがとうございます。よくお店で売っているお菓子はいただきますけど、手作りってあまりいただいた事がないのでとても嬉しいです」

そう言ってにっこりと笑うナナシを見て女性達はとても大喜びしていた。

そしてそのやり取りを見ていたカタクリはもうコーヒーもケーキも食べ終わっていたので静かに席を立った。
ナナシは女性達を席に案内して注文を取ると、カタクリが会計を待っているのに気が付き急いで向かった。

「すみません。お待たせ致しました」
「……とてもうまかった」
「よかった!ありがとうございます。今日のお代はけっこうですので……」
「いや、ダメだ」
「でもコーヒーはカタクリ様にいただいた物ですし、ケーキはお礼なんですよ。だから今日は本当にいりません」
「……いいのか?」
「はい!」
「わかった……と、ところで」
「はい?」
「て、手作りのお菓子は、あー、もらえると嬉しいのか?」
「え?ああ、もちろんですよ!自分のために作ってくれたんだと考えると、嬉しくなりますしね」
「………そう、か。そうだな」

カタクリは今日ナナシが自分のためにケーキも作ってくれたと聞いたとき本当に嬉しかったなと思い出した。

「よし……また来る」
「お待ちしております。ありがとうございました」

カタクリは喫茶店を出ると早足で屋敷へと戻った。















屋敷に戻るとカタクリは電伝虫に手を伸ばす。
「……もしもし?」
「突然悪いな。お前に頼みがあって、明日暇だったらおれの屋敷に来てもらえないか?」
「頼み?珍しいな。明日は暇だし大丈夫だよ」
「そうか、助かる」
「じゃあまた明日な兄貴」
「ああ、待ってるぞ……クラッカー」










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ちょっと不穏な空気(笑)

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