00:紳士な彼女
コムギ島には女性が一人で営んでいる喫茶店があった。
そこはとても女性に人気があった。人気の理由はもちろんそこのお茶やお菓子がとても美味しいからなのだが、でももう一つ大きな理由がある。
オーナーのナナシがとてもカッコイイのだ。
ナナシは見た目が中性的で、そしてとても紳士的だった。だから女性客はここに来ると自分がお嬢様になったような気分を味わうことが出来るのだ。だから今日も店内は女性客でいっぱいだ。
もちろん最初は中性的とはいえ美しいナナシ目当ての男性もいた。でもあまりにもナナシがカッコ良すぎて皆すぐに諦めてしまうのだ。
だから今通っている男性客のほとんどはそんなナナシに純粋に憧れているファンだったり、アドバイスを求めたりする者だけだ。
そしてこの島の大臣であるカタクリもこの喫茶店の常連客である。
今日は閉店時間ギリギリにカタクリはやって来た。
「いらっしゃいませカタクリ様。今日はもういらっしゃらないかと思っていました」
「仕事が片付かなくてな」
そんな会話をしながらナナシはどうぞといつもの席へとカタクリを案内する。
「今日もご注文はお任せでよろしいですか?」
カタクリが頷くのを確認するとナナシは少々お待ちくださいと頭を下げてカウンターの中へと入っていった。
しばらくしてナナシはお待たせしましたと紅茶とケーキをテーブルの上に並べていく。
「あと、よろしければこちらも」
ナナシはチョコレートの乗った皿をテーブルの上に置いた。
「お仕事を頑張っているカタクリ様にサービスです」
「いいのか?」
「はい……あ、でも他のお客様には秘密で」
ナナシはウインクをして、ごゆっくりおくつろぎくださいと言ってテーブルを離れた。
去っていくナナシの背中を見ながらカタクリが思う事はただ一つ。
今日もカッコイイ!!
島の大臣であるカタクリもナナシのファンの一人なのであった。
「ありがとうございました」
にっこりと笑い頭を下げるナナシを見てやっぱりカッコイイとカタクリは思うのであった。
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これはまだカタクリさんが若い頃のお話です。夢主は年上。