これは恋ではありません | ナノ
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 09:嬉しかったので

カタクリは昨日一日お菓子作りをしていて仕事が何も終わっていなかっので、今日は早起きして仕事に取り掛かっていた。でも残っていた仕事は簡単な物ばかりで余裕でメリエンダまでには終わらす事が出来た。
だからメリエンダはゆっくりして、その後ナナシの喫茶店に行こうと考えた。

カタクリはメリエンダが終わるとすぐに屋敷を出た。
昨日のビスケットがちゃんと口に合ったか聞かないとなと考えながら歩いていると、港の方から部下が一人走ってくるのが見えてカタクリはとても嫌な予感がした。

「カ、カタクリ様ー!カタクリ様大変です!港で傘下の海賊達がケンカをー!!」

必死に報告してくる部下を無視するわけにもいかずカタクリは溜め息をついた。





傘下の海賊達のケンカはカタクリが行けばすぐに収まったのだが、港の被害はなかなか酷いもので部下達だけでどうにか出来るものではなく、カタクリはイライラしながら仕事をしていた。そんなカタクリに部下達は怯えながら動いていた。

港に来てからどれくらいたっただろうかと時間を確認しようとしたら、港にあった時計も破壊されていてすぐに確認できずカタクリは更にイラついた。

「……おい」
「は、はい!」
「今何時だ?」
「あ、はい……19時15分です!」

喫茶店の営業時間は19時までなのでカタクリは舌打ちをした。それを聞いた部下はビクッと大きく体を震わせている。

「あ、あの……」
「仕事に戻れ」
「は、はい」

カタクリは定休日と遠征中以外は、どんなに仕事が忙しくても必ず時間を作って喫茶店に行っていたので酷く落ち込んだ。

「……ナナシさんに会いたかった」

カタクリは大きな溜め息をついた。





電伝虫でママへの報告を済ませるとカタクリの仕事はやっと終わった。
あとは任せると部下に言って、最悪な一日だったと思いながらカタクリは歩きだした。

もしかしたらまだ喫茶店にナナシがいる可能性がと少しだけ期待していたのだが、店の前を通ってみたらもう電気はついていなくて、カタクリは落ち込みながら屋敷へと戻った。

屋敷に入ればすぐに使用人が紙袋を持ってカタクリの前までやって来た。

「おかえりなさいませカタクリ様。ご報告したいこ……」
「明日にしろ」
「で、ですが、あの、カタクリ様が贔屓にしている喫茶店の……」
「何?報告とはナナシさんの事か?」
「は、はい」
「今すぐ話せ」

使用人は持っていた紙袋をカタクリの前に差し出した。

「これは?」
「カタクリ様に渡して欲しいとナナシさんに頼まれました」

カタクリはそれをそっと受け取り中を覗いた。中には可愛くラッピングされたお菓子と手紙が入っていて、その場ですぐにカタクリは手紙を開いて読み始めた。

カタクリ様へ
昨日のビスケットとても美味しかったです。ありがとうございました。直接お礼が言いたかったのですが、今日のカタクリ様はいつも以上に忙しそうでしたので手紙で失礼致します。
お菓子は差し入れです。よろしければ召し上がってください。
ナナシより

手紙にはこう書かれていて、カタクリは使用人に汚れないように大切に保管しといてくれと紙袋を渡すと屋敷を飛び出した。





ナナシが夕飯を済ませ食後のコーヒーを飲んでいる時控えめにドアがノックされた。あまりにも小さな音で気のせいかなとも思ったのだが、すぐにもう一度今度はさっきよりも少しだけ強くノックされたのでナナシは気のせいではなかったかと立ち上がった。
はーいとドアを開ければ、そこにはカタクリが立っていてナナシはにっこりと微笑んだ。

「こんばんはカタクリ様」
「こ、こんな時間に悪い」
「そんなに遅くないので大丈夫ですよ。今日は港で海賊が暴れていたと聞きました。大変でしたね……もう大丈夫なんですか?」
「ああ、片付いた」
「流石カタクリ様ですね。あの、さっきお屋敷の方に……」
「受け取った、手紙も読んだ」
「あ、よかった。昨日のビスケット本当に美味しかったです!ありがとうございました!」

とても嬉しそうに笑っているナナシを見てカタクリは口に合ったようでよかったと安心していた。

「直接お礼を言う事が出来てよかったです……ところでカタクリ様は私に何かご用が?」
「あ、いや……」

カタクリは手紙と差し入れが嬉しくて、ただナナシに会いたくなっただけだった。
だから勝手に体が動いていて、気付いたらナナシの家の前まで来ていたのだ。
でもそんな事カタクリは恥ずかしくて言えるわけもなく、顔を赤くしてストールを掴んだまま黙ってしまう。
ナナシはどうしたのだろうかと思いながら首を傾げた。

「えっと……上がりますか?」

ナナシがドアを大きく開ければ、カタクリは勢いよく首を横に振った。

「ダ、ダメだ」
「え?」
「ひ、一人暮らしの女性の家に、男が夜に上がるなんて、ダメだ」
「え?あ……す、すみません」
「いや……ま、また店に行く」

それだけ言うとカタクリは走って行ってしまった。

ナナシは男性に恋愛相談に乗って欲しいと言われると自分の家で話を聞いたりする事があった。でもどの男性もカタクリのように言う事はなく普通に上がり込んできていた。

「……女扱いされたの、なんか久しぶり」

ナナシの顔は少し赤くなっていた。















次の日屋敷にダイフクとオーブンが来たので、カタクリは昨日もらった手紙をさっそく二人に見せていた。もちろんまた立派な額に入っている。
「うわ、増えてる」
「うわってなんだ。ナナシさんに昨日また手紙をもらったんだ」
「この花は?」
「ああ、それもナナシさんがくれた物だ。枯れないように加工してもらった」
「やばっ」
「ああ、本当に素敵すぎてヤバいんだ。あと昨日お菓子ももらってな。ラッピングが可愛くて写真を撮っておいた。そしてこれがその時のリボンと袋で……」
「いや、だからお前の頭だってば!」










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カタクリは夢主の事をちゃんと女性だとも思っているので、こう、ね……でも海賊のくせに真面目過ぎですね(笑)
お花はプリザーブドフラワーみたいな感じで保管されてます。

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