これは恋ではありません | ナノ
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -


 08:なんとか完成

午前中から始めたお菓子作りだったが完成したのはなんとか夕方と言える時間だった。
見た目は少し悪いが美味しいビスケットが完成したのでカタクリは喜び、クラッカーはやっと解放されるともっと喜んだ。

「あとはラッピングだな」

そう言ってキッチンを出ていったカタクリはすぐに大量のラッピング用品を持って戻ってきた。なんのお菓子を作るか決める前に用意していたからか色々な大きさの箱や袋にリボンがあって、どれがいいだろうかと言いながらカタクリはドンドン出していく。
クラッカーはそれを見て顔を青くしていた。だってさっきのお菓子作りの様子からしてカタクリがラッピングを上手く出来るはずがないからだ。
やっと完成したビスケットを箱や袋に詰める前に全部砕かれてしまうと思ったクラッカーは慌ててカタクリを止めた。

「ま、待ってくれ兄貴!ラッピングは!ラッピングはおれに任せてくれ!!」
「ダメに決まっているだろう」
「で、でもビスケット全部砕いたり……」
「ナナシさんに渡すものだぞ!?丁重に扱う!で、どれがいいと思う?」

絶対に無理だろうと思いながらもクラッカーは渋々カタクリが出した箱と袋を眺め始めた。
ビスケットの見た目が良ければ透明な袋もありだが、見た目がちょっと残念だから箱の方がいいだろうとそっちを指差した。

「じゃあ箱にするか」

カタクリは力んでビスケットを砕かないようにとそれはそれは慎重にゆっくりと箱に詰めていった。見ていてもどかしいスピードだが、砕かれるよりはいいかとクラッカーは大人しく見守っていた。

「よし!あとはリボンを……はっ!」

リボンに伸ばされたカタクリの手が突然止まったのでクラッカーは首を傾げた。

「どうした兄貴?」
「ナナシさんの好きな色がわからない……」
「あ?じゃあ兄貴の好きな色にしたらいいだろ?」
「だ、だがその色をナナシさんが嫌いで、センスねェなこいつ!とかもしも言われたら……」
「そんな性格悪いのかそいつ?」
「バカ野郎!!ナナシさんが性格悪いわけあるか!!凄く優しくて紳士な人だぞ!!あとお前より年上だからな!そいつとか言うんじゃねェ!!失礼だろうが!!!」
「ご、ごめんなさい」
「わかればいい」

そしてまたカタクリはリボンの色で悩みだす。クラッカーはすっかり疲れてしまい溜め息をついた。

「……おれもう帰っていい?」
「いや、ダメに決まっているだろう!?初めての、しかも手作りのプレゼントだぞ!?一人で渡しに行くなんて心細いだろうが!だからお前はおれと一緒にナナシさんの所に行くんだ!」
「……そっかァ」

クラッカーは諦めた。





カタクリがリボンの色で悩みだして一時間。

「いい加減にしてくれ兄貴!」
「……ぐっ!」

まだリボンの色は決まっていなかった。もう色々諦めていたクラッカーだったが、流石がに一時間も悩まれたら痺れを切らす。

「何色でもいいだろ!?」
「ダ、ダメだ!初めての手作りのプレゼントで失敗したら一生立ち直れない!!」
「でもこのまま夜中まで悩むつもりか!?」

クラッカーのその言葉にカタクリはハッとして時計を確認した。もう喫茶店の閉店時間三十分前になっていて、カタクリは慌ててリボンを選び急いで、でも丁寧に頑張ってラッピングをした。そしてクラッカーを脇に抱えて喫茶店に向かって走り出した。





バーンと体当たりするようにしてドアが開かれたのでナナシはびっくりして少し飛び跳ねた。
そんなナナシの姿を見てカタクリは申し訳なくなりすぐに頭を下げた。

「悪い。少し慌てていて……」
「あ、カタクリ様でしたか。フフ、大丈夫ですよ、いらっしゃいませ」

にっこりといつものように笑ってもらえたのでカタクリは安心した。
そして店内を見回すと閉店時間ギリギリだからか客は誰もいなくて、これなら今渡しても大丈夫だよな?と思いながらカタクリはプレゼントをおずおずと差し出した。

「え?これは……」
「き、昨日手作りのお菓子は嬉しいと言っていたから、作ったんだ」
「え!?カ、カタクリ様がですか!?」
「ああ。初めてで、その、見た目は少し悪いんだが、味は保証する。あと、ラッピングが、その、好きな色がわからなくて、リボンが、もし気に入らなかったら、すまない」

ナナシはカタクリの手からそっとプレゼントを受け取った。ちょっと曲がって結ばれているリボンを見ながら、カタクリが全部自分のために頑張ってくれたのかと考えると嬉しくなって自然に笑顔になった。

「ありがとうございます……私感激です!」
「ほ、本当か!?リボンの色はそれで……」
「はい!もちろんですよ!カタクリ様が選んでくれた色ならなんでも嬉しいですから私!」
「そ、そうか、よかった」
「本当にありがとうございます!食べるのが楽し……あ、嬉しすぎて忘れてました!」
「なんだ?」
「えっと、そちらの方は……弟のクラッカー様、ですよね?」

ナナシはカタクリの脇に抱えられピクリとも動かないクラッカーを見て首を傾げた。

「ああ、そうだった。今日は弟のクラッカーと一緒で……ん?どうしたクラッカー?」

カタクリはプレゼントを持つ手の方は揺らさないよう気を付けていたが、クラッカーを抱えている方の腕は何も気にしていなかったので激しく動かしていた。
だから抱えられていたクラッカーは今激しい吐き気に襲われているのだ。

「……気持ち悪い」

クラッカーはこの日カタクリの事が少しだけ嫌いになった。















その後吐き気は無事に収まりナナシの美味しいお茶とお菓子を食べてクラッカーの機嫌はすっかり良くなっていた。
「うまかったか?」
「ああ!最高に美味だったよ!」
「じゃあ、また一緒に行こうな」
「ああ!もちろんだよ!」
「あとナナシさん凄く喜んでくれていたし、またお菓子作り教え……」
「それは断る」










ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
クラッカーはどんなに頼まれても二度とお菓子作り教えない。

[ 戻る ]