短いお話 | ナノ
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 構ってください

「クラッカー様見てください」

ナナシは書類の整理中にうっかり紙で切ってしまった指先を出している。それを見たクラッカーは顔を歪めた。

「見せんでいい。おれはそういう地味に痛そうなケガを見るとぞわぞわするんだ」
「知ってます。だから見せに来ました」
「このっ」

クラッカーに頭を叩かれてナナシはムスッとしながら切れた指先を眺めている。

「私可哀想」
「そんなショボいケガで何言ってんだか」
「痛いの痛いの飛んでけーってやってください」
「なんでおれがそんな事……」
「クラッカー様お兄ちゃんでしょ?」
「お前の兄ではない」
「……やっぱり私可哀想。頑張って仕事してたから怪我したのに、上司は全然優しくしてくれないし、褒めてもくれない……」

後ろでブツブツとずっと文句を言っているナナシの事をクラッカーは本当に鬱陶しい部下だと思いながらも部屋から追い出す事はしない。

「はいはい、偉い偉い」
「もっとちゃんと褒めてください」
「じゃあ、これ終わらせたらな」

ナナシはクラッカーに書類を大量に渡さた。

「本当に優しくないです」
「おれはどうせ優しくないよ。ほら、早く仕事しろ」

手をヒラヒラとさせているクラッカーを見てナナシは頬をプクゥと膨らませながら睨んだ。

「痛いの痛いのォ……クラッカー様にー飛んでいけェェェェ!!!」

ナナシはバッチーンっとクラッカーの背中を叩いて逃亡した。もちろん書類を投げ捨ててだ。

「いっ!!?こっの野郎!!」

クラッカーはナナシの事を全速力で追い掛けた。


屋敷の中を走り回る二人を見て他の部下や使用人達はまたやってるなーと思いながら止める事も出来ないのでただ見ていた。

「あいつクラッカー様に構ってもらいたいだけなんだから、もっと普通にすればいいのにな」
「本当にな……あれおれがやったら多分殺される」
「おれも殺されるな。なんだかんだクラッカー様ナナシに甘いからな」
「羨ましい」

そんな風に思われている事をナナシは知らない。





クラッカーに追い掛けられて逃げ切れるわけもなくナナシはすぐに捕まってしまった。

「貴様いい加減にしろよ!?」
「だってェ!大きくても小さくてもケガした時は優しくしてもらいたいんですもーん!!」
「他の奴の所に行け!」
「私はクラッカー様がいいんですもーん!」

そう言いながらえーんえーんと泣き真似をするナナシは本当に鬱陶しいと思うのだが、自分がいいと言われるとクラッカーは悪い気はしなかった。

「チッ……ほら、手」
「手?」
「ケガしたとこ見せろ」
「え?あ、はい」

ナナシがケガをした指を出せば、クラッカーはポケットから何か取り出し貼り付けた。
ナナシはそれを見て目をキラキラと輝かせる。

「く、くまさんの絆創膏!!!」
「幼い兄弟用だ。有り難く思えよ?」
「よっ!流石お兄ちゃん!!」
「だからお前の兄ではない」
「もーわかってますよ!よーし!張り切って仕事しましょー!」

元気よく走り出したナナシを見て、本当に変な奴だと思いながらクラッカーは笑っていた。















「クラッカー様!女の子はくまさんじゃなくて、うさぎさんとかにしてあげた方がきっと喜びますよ!」
「ああ、妹達にはくまさんじゃなくて、うさぎさんの絆創膏だよ」
「え!?じゃあ何故私はくまさんなんですか!?女の子なのに!」
「お前は可愛い妹じゃないからな」
「確かに妹ではないですけど!でも一番可愛い女の子の部下ですよね!?ね!?」
「それを自分で言えてしまうその脳ミソは可愛いな」
「脳ミソ!?やだ!見えない場所なのに可愛いって褒められちゃった!」
「……お前は幸せだな」
「はい!クラッカー様の部下なので!」
「……」
クラッカーはわしゃわしゃとナナシの頭を撫でた。










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クラッカーにくまさん、うさぎさんって言わせたかっただけ。

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