短いお話 | ナノ
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -


 大人になりました

ナナシが店の前の掃除をしていると、後ろからぐいぐいと服を引っ張られたので振り向けば花を一本持った子供が立っていた。

この子供が現れるようになったのは一週間前だ。最初は無言で花を持っているだけだったから意味がわからずナナシは少し悩んだのだが、もしかしてくれるの?と聞いてみたら子供は黙って頷いたので笑顔でありがとうと受け取った。それから毎日やってくる。

子供は花を渡すといつもすぐに走っていってしまうので、ナナシは今日はすぐに受け取らなかった。

「今日もくれるの?」

子供は黙って頷いた。

「毎日どうもありがとう」

子供は照れ臭そうにしながらまた頷く。ナナシが可愛いなーと思いながら頭を撫でたら、子供の顔が耳まで真っ赤に染まった。

「フフフ。君のお名前は?」
「!し、知りたいか?」
「うん、とっても」
「そ、そうか、カタクリだ!」
「カタクリくんね。私はナナシ。よろしくね」
「……ナナシ」

カタクリはナナシを見上げながら少しもじもじとしだした。

「どうしたの?」
「お、お前、結婚してるのか?」
「え?まだしてないけど……」
「じ、じゃあ!お、おれが結婚してやってもいいぞ!」
「あらまァ」

毎日花を持ってくるのでもしかしてとは思っていたが、まさかプロポーズをされるとは思っていなかったナナシは少し驚いた。でも子供にそんな風に言われるのはなかなか嬉しいものだ。

「どうもありがとう。気持ちは嬉しいんだけど……カタクリくん今いくつ?」
「5歳」
「そっか。私今18歳なんだよね。だからカタクリくんが結婚出来る頃にはもうおばさんだよ?」
「い、今結婚する!」
「フフフ。ちょっと子供とはまだ結婚出来ないかなァ」
「も、もう5歳だから子供じゃない!」
「ん、んー?カタクリくんの中では大人でも私にとっては5歳は子供だなァ……ごめんね」
「………グスッ」

カタクリは泣き出してしまった。ナナシは慌ててカタクリの前に座り込んだ。

「ほ、本当にごめんね!な、泣かないでー」
「け、結婚、する!!」
「うーん……あ、そうだ!じゃあカタクリくんが大人になったらまた来てくれる?」
「え?」
「カタクリくんが大人になってもまだ私の事が好きだったら、その時結婚するかどうか考えよう?どう?」
「……大人って何歳だ?」
「え?そうだなァ……んー20歳?」
「……わかった」

カタクリはごしごしと目を擦って涙を拭いた。
そして小指をん!と出してくるので、やっぱり子供のする事は可愛いなと思いながらナナシも小指を出す。カタクリは小指を握って歌をうたった。

「や、約束したからな!他の男と結婚したらダメだからな!」
「うーん、その時はごめんね?」
「ダ、ダメだからなァ!!!」
「アハハ!了解。可愛いなァカタクリくんは」
「お、おれは男だ!可愛いって言うな!!」

ナナシはまたカタクリの頭を撫でた。





そして月日は流れて、ナナシは目の前に立っている男を見て笑っていた。男はそんなナナシを見て不満そうな顔をしている。

「……何故笑う?」
「いやー驚いちゃって!」
「お、お前が言ったんだろ!?大人になったらまた来いと……」
「うんうん、そうだったね……久しぶりカタクリくん」

カタクリはあの日の約束通りまたやって来た。
そしてあの時とは違い今は綺麗な花束を持っている。

「おれはこの前20歳になった」
「うん」
「ま、まだお前の事が好きだ」
「うん」
「だから……け、結婚してくれ!」

勢いよく差し出された花束をナナシは受け取らず首を傾げた。

「うーん…………どうしようかな?」
「なっ!?」

カタクリはショックで花束を落としてしまった。

「け、結婚するって約束しただろう!?」
「え?どうするか考えようって約束しただけで、結婚するとは約束してないよね?」
「う、うぐっ……!」
「それにわかってると思うけど私もう30超えてるよ?カタクリくんからしたらやっぱりおばさ……」
「ナナシは変わらずキレイだ」
「あ、ありがとう」

ナナシはその一言にちょっとときめいてしまい顔が熱くなって手でパタパタとあおいだ。

でも海賊と結婚ってどうなのかしら?と悩んでいたら、突然カタクリに抱き上げられてしまった。

「え?何!?」
「強行手段だ」
「えェェ……急にこんな事して嫌われるとか思わないの?」

この一言でカタクリの動きが止まる。

「き、嫌われるのは困る」
「だよね?」
「じゃあ、おれはどうすればお前と結婚できるんだ」

拗ねたように小さな声でボソッと呟いたカタクリがなんだか可愛くてナナシは少し笑ってしまった。そしてカタクリの首に手を回した。

「私って案外チョロいみたい。もう一回お願いされたら結婚しちゃうかも」

そう言ってナナシが笑えばカタクリは顔を真っ赤に染めた。















「そういえば私カタクリくんの手配書見たよ。懸賞金凄いね。やっぱり強いって事?」
「まあな」
「そっかァ……カタクリくんのカッコイイ所見れるの楽しみにしてるね」
「す、すぐに見せてやるからな!」
そう言ったカタクリは海王類が出てくる度に倒し、そして必ずナナシの事をどや顔で見てきた。
「……やっぱり可愛いねカタクリくん」
「なっ!?ク、クソッ!可愛いって言うな!!」










ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
たぶん一目惚れ。

[ 戻る ]