短いお話 | ナノ
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ナナシは子供の頃から食べる事が大好きだ。美味しい物を口いっぱいに頬張って食べると幸せな気持ちになれた。

そんなナナシは大人になった今、ビスケット島のクラッカーの屋敷でメイドとして働いていた。
本当は海賊の屋敷で働くのは怖かったナナシなのだが、給料が凄くよかったのだ。ナナシはビスケット以外のお菓子だって色々食べたかったので、怖いのを我慢して働く事を決めた。

実際働いてみると広い屋敷なのでクラッカーに会う事はあまりなかったし、クラッカーに関わる仕事は他のメイドたちが喜んでやっていたのでナナシは安心して働いていたのだが、最近困った事になっていた。

「おい」
「へ、へい!!おはようございますクラッカー様!!」
「今日の仕事の予定は?」
「こ、この後は2階の廊下の窓拭きであります!」
「……それだけか?」
「へ!?あ、いや、ほ、他にも色々……」
「色々とは?」
「あの、えっと……」
「……ないのか?」
「いえ!すっっっっっごく!いっぱいあるでございます!!」

一ヶ月ほど前からこうやってクラッカーに話し掛けられるようになってしまったのだ。理由は全くわからない。他のメイドたちには羨ましいと言われたが、海賊が怖いと思っているナナシは話し掛けられる度にビビっていた。
でもいつも最後にはクラッカーの美味しいビスケットを山ほどもらえたので途中で逃げる事はしなかった。

「いっぱいか?」
「は、はい!」
「そうか……休憩は何時だ?」
「え?き、今日は13時頃とらせていただく予定であります!!」
「……チッ」
「ひっ!?ごめんなさい!?」

クラッカーの舌打ちにビビったナナシはペコペコと頭を下げる。

「や、休まず働くであります!!」
「おい、休むなとは言っていないだろう」
「へ?」

ナナシがおずおずと顔を上げると、クラッカーの腕が伸びてきて頭をポンポンと叩かれた。

「町で人気のあるレストランを知っているか?」
「レ、レストラン、ですか?」

ナナシはなんだこの状況と思いながらも痛くはないのでそのままどこのレストランなのかと考える。

「えっと、えっと………あ!もしかしてあの高くて、しかも予約も全っ然取れないと言われているレストランですか?」
「ああ、それだ。まあ、おれはいつでも行けるがな」
「あ、島の大臣ですもんね……いいなァ」

ぼそりと呟いたナナシのいいなァと言う言葉はクラッカーにしっかりと届いたようだ。

「13時ではなく12時に休憩を取るなら一緒に連れていってやってもいい」
「マ、マジでございますか!?」
「遅刻は許さんぞ?」

ナナシはずっと行ってみたいと思っていたレストランなので嬉しくて勢い良く頷いたのだが、すぐにあっと言って下を向いてしまった。

「おい?どうした?」
「す、凄く行きたいんですけど、や、やっぱり無理でした」
「あ?」

ナナシがそう言えばクラッカーが睨んできたので、ナナシは顔こわっと思いながらもなんとか声を絞り出す。

「き、きき、金欠なんです!!!」
「金欠?……おい、お前まさか、おれが払わせると思っているのか?」
「え?は、はい」

ナナシがそう言えばクラッカーは大きな溜め息をついた。
なんで溜め息?と思いながらナナシがクラッカーを見ていたら手が伸びてきて少し乱暴に頭を撫でられた。

「あわわ、な、何を……」
「おれが最近気に入っている事を教えてやろうか?」
「え?い、いや、いいです」
「いや、聞けよここは」
「あ、そ、そうなんですね、すみません。な、なんでございますか?」
「とりあえずこれを食え」

そう言ってクラッカーは手をパパンと叩いてどんどんビスケットを生み出し差し渡してきたので、ナナシはちょっとビビりながらもいつものようにビスケットを口いっぱいに詰めていく。それを見てクラッカーはハハっと笑った。

「お前はアホみたいに口に詰め込むな」
「むぐっ!?ら、らっふぇ……」
「おい、飲み込んでから話せよ?」
「ふぁ、ふぁい」
「確か1ヶ月ほど前だったか、お前がビスケットを今みたいに頬張っている所を見かけたんだが……汚いと思った」
「!?」

じゃあビスケット食べさせるなよ!とナナシは思ったのだが、まだ飲み込めていないので言えなかった。いや、飲み込めてたとしてもナナシはクラッカーにそんな事言えないのだが。

「だが……悪くないとも思った」

クラッカーはそう言うとまた手をパパンと叩いてビスケットを生み出すとほらと言ってナナシにビスケットを山ほど持たせた。

「それがおれの最近気に入っている事だ」

クラッカーはナナシの頭を軽くポンと叩いた。

「昼はおれの奢りだ。好きなだけ食べさせてやるよ」

まだビスケットを飲み込めていないナナシは黙ってこくりと頷いた。それを見てクラッカーは満足そうに笑うと12時だからなと言い残し去っていった。
しばらくしてゴクンとビスケットを飲み込んだナナシがぼそりと呟く。

「…とりあえずWin-Winって事なの、か?」

よくわかんないけどラッキーと思いながらナナシはビスケットを一つ口に放り込んだ。















「ご、ごちそうさまであります!」
「ああ。また連れてきてやる」
「え!?あ、ありがとうございます!!」
「ところで金欠だと言っていたが給料は少ないか?」
「い、いやいやいや!とてもたくさんいただいてます!ただちょっと、先週カカオ島に行った時にカフェ『カラメル』で食べ過ぎちゃって……」
「ああ、プリンの……今度そこのチョコが食べたければおれに言え。取り寄せてやる」
「マ、マジでございますか!?」
「ああ」
「じゃあ明日でお願い致します!!」
「……お前なかなか図々しいな」
「え!?ち、調子に乗ってすみません!!」
「いや、まあ、こういうのもたまには新鮮で悪くない。明日おれの部屋でメリエンダだ」
「いやっほー!!」










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クラッカーさんは夢主の事をペットみたいに思ってる。今はまだね。
夢主の方は美味しいものがたくさん食べれるとりあえずOK(笑)

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