時空を超えて愛してる | ナノ
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -


 07:料理も出来る

クラッカーは暗闇の中にいた。
どこからか声が聞こえる気がして辺りを見回すも本当に真っ暗で何も見えない。
こっちに近付いてきているのか、声はだんだんはっきりと聞こえてくる。

その声は兄さんと言っているような気がして、クラッカーは声のする方に慌てて走り出した。





何か痛みを感じて目を開ければ枕を持ったナナシが目に入る。

「おはよう」
「…………何をした?」
「何回呼んでも起きないから、枕でバシッと一発」
「くそっ!おれは今……」
「何?いい夢でも見てた?」
「………忘れた」
「夢ってすぐ忘れる時あるよね。ほら、ご飯食べて」

ナナシに急かされて、クラッカーはなんだかモヤモヤしたまま起き上がった。





ナナシは今日から仕事だ。クラッカーを一人置いていくのは不安ではあったが、具合が悪いわけでもないのに急に休むのは申し訳ないし、子供を職場に連れていくなんてもっと無理なので、一応作ったお昼のお弁当とスペアキーとお金の入った財布をテーブルの上に置く。

「これお昼のお弁当ね。もし外に行きたかったら、これ鍵だからドアちゃんと閉めてね。あと一応お金」
「急になんだ?」
「私はこれから仕事に行くから」
「仕事………何時に帰る?」
「うーん、どうかな………19時くらい?」
「遅い!もっと早く帰ってこい!」
「無茶言わないでくれる?」

そろそろ家を出ないと遅刻してしまうとナナシは立ち上がった。クラッカーはナナシの後ろをついてくる。

「いってくるね」
「………本当に行くのか?」

クラッカーが元気のないように見えてナナシはクスッと笑ってしまう。クラッカーはナナシの笑顔を見てやっぱり顔が熱くなる。

「何?寂しい?不安?」
「わ、笑うなブス!そんな事あるわけないだろ!!さっさと仕事に行け!!!」
「本当にかわいくねェな!部屋散らかすなよクソガキ!あと無駄遣いもするなよ!」

ナナシはバンっと勢いよくドアを閉めて出ていってしまった。

クラッカーは部屋に戻りナナシの作ったご飯を食べる。どうしようか迷ったが食器は洗った。
そしてベッドに寝転がりさっきどんな夢を見ていたか思い出そうとするのだが全く思い出せなくて仕方ないと諦め、ナナシが帰ってくるまで何をするか考える。部屋には特に何もない。テレビの使い方は教わったがあまり好きになれなかったので、ベッドの側に置いてある雑誌を適当に取ってお菓子のレシピが乗っているページを開いた。

雑誌を持ってキッチンで材料が揃っているか探すも、ナナシの家はとにかく品揃えが悪い。本当に必要最低限の調味料しか置いていなくて舌打ちをしながら部屋へと戻り財布の中を見てみる。
ナナシはもしも何かあったらと思って意外と財布にお金を入れていた。
クラッカーは店までの道は覚えていたので財布と鍵を持って家を出た。





ナナシは時間になると上司に捕まらないようにさっさと会社を出たし、駅まで走ったのでいつもより早く帰ってくる事が出来た。大丈夫だろうとは思いながらもクラッカーを長い時間一人で家に留守番させるのが少しだけ不安だったから。

そのまま早足でアパートの側までくればクラッカーが立っているのが見えた。ナナシが腕時計を見ればまだ18時を少し過ぎたところで、帰るのは19時くらいだと言っておいたのになとナナシは苦笑いした。

「ただいまー」

ナナシの声に気付いたクラッカーは早足でこちらに駆け寄ってくる。

「早いじゃないか」
「急いだからね」
「そうか」
「夜は少し冷えるし中で待ってなよ」
「べ、別にお前を待っていた訳じゃない」
「そーですか。さて、夜ご飯どうするかねー」
「…………作った」

クラッカーは小さい声で呟いた。

「お、お前の分もあるが、お前のためでは………」
「へいへい、わかってますよ。どーも」





部屋に戻ってクラッカーの作ったご飯を食べてナナシは驚いた。

「うまっ!」
「当たり前だ」
「え?これ、すごい………明日もお願いします」

ナナシはにこにこしながら料理を口に運んでいく。その顔を見るとクラッカーはつい頷いてしまいそうになったのだが、慌てて首を振った。

「あ、甘えるな!!」
「だって美味しいんだもん。君居候だしさ、家賃の代わりとして頼むよー」
「ちっ…………し、仕方ないな。でも気が向いた時だけだからな!」
「やったね」

そんな風に言いながらも明日は何を作ってやろうかなんてクラッカーはもう考えていた。















ナナシはクラッカーに渡していた財布を確認してみたらお金が随分減っていた。
「ちょっ!?お金何に使った!?」
「あ?お菓子の材料を買った。あとなんだったか………うまそうなチョコを買った」
「嘘………まさかそれって………」
「見ろ。16粒入りのトリュフだ。見た目もいいし味も美味だったぞ。お前にも分けてやろうか?本当にうまいから甘いものが好きに………」
「もう金は渡さない」
「はァ!?ふざけるな!ちゃんと我慢して金は残したんだぞ!?」
「五日分のつもりで置いていったの!なのに半分以上も使って………」
「おれは明日またあの飲み物を飲みに行くんだ!!」
「ダメ!もう外出禁止だクソガキ!」










ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
クラッカーさんはお料理も作れると思ってます。器用そうだから。

[ 戻る ]