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 06:お前のためではない

結局ナナシは大量のお菓子を買わされた。

お昼ご飯を食べ終わると、クラッカーは買ったお菓子の箱を眺めどれから食べようかなんて言いながらニヤニヤしていた。

「それ5日分だからねー」
「は!?こんなの2〜3日で、いや!1日で食べ終わる!」
「やめてよ!子供にその量は多すぎるから!!」
「おれは大人だ!」
「体は子供でしょ!?」

クラッカーは舌打ちをしながらもお菓子をちゃんと5日分に分け始める。
ナナシはせっかくの休みなのに疲れちゃったなと思いながら床に寝転んだ。

「おい、食ってすぐに寝るとデブになるぞ?」
「お黙り」
「本当に可愛くない女だな」
「もー!疲れてんの!静かにして!!」

大きな溜め息をつきながらナナシはクラッカーに背を向け目を瞑った。
そんな怒鳴らなくてもいいだろうとクラッカーはぶつぶつと文句を言いながらチョコレートの袋を開けた。

そしてナナシの前まで移動して、チョコレートを一粒無理矢理口の中に押し込んだ。

「んっ!?」
「糖分が足りてないからそんなにイライラするんだ」

甘いものが好きじゃないナナシは口の中に広がるチョコレートの甘さに顔を歪めた。でも吐き出すわけにもいかないので無理矢理飲み込みうえーと舌を出す。
クラッカーはその顔を見て本気で驚いていた。

「も、もしかしてとは思っていたが…………甘いものが嫌いなのか?」
「ぅえ?今更じゃない?もし好きだったら最初から甘いお菓子出てきてるでしょ?」
「しょ、正気か!?」
「正気だわ。甘いの好きじゃない人いっぱいいる」
「で、でも兄貴が昔から糖分こそ力の源って言っていたぞ!?」
「そうね、米にも糖分入ってるから大丈夫。はい、おやすみなさーい」
「待て!おれの話をちゃんと聞け!!」

クラッカーはぎゃーぎゃー言いながら体をべしべしと叩いてくるのだが、ナナシは貴重な休みをこれ以上無駄にしたくなかったので無視して目を瞑り続けていた。
何度叩いても口を開かないナナシを見てクラッカーは諦めたのか舌打ちをしてから離れていった。

ナナシはそのまま寝てしまった。





クラッカーは寝転んでいるナナシを見ていた。
ナナシがおやすみなさいと言ってからたぶん一時間ほどたっているが、ナナシはピクリとも動かないのだ。

クラッカーはもしかして死んでるのではと思いながら静かにナナシに近付いてみた。
すうすうと小さな寝息が聞こえてきてクラッカーはほっと胸を撫で下ろす。そして幼い兄弟達にするように毛布をかけてやった。

とくにやる事のないクラッカーは部屋に置いてある雑誌をパラパラとめくった。





ナナシは目を覚ますとかけられている毛布を見て首を傾げた。そしてキッチンから何かいい香りがするのに気が付いて、まだ眠い目を擦りながらナナシは立ち上がった。

キッチンではクラッカーが雑誌を見ている。

「…………何してんの?」
「ああ、起きたか。ちょうど今出来上がった」

クラッカーは雑誌を置いてフライパンの蓋を開けた。

「…………パン?」
「蒸しパンだ。この本に乗っていたから作ってみた」

クラッカーは雑誌を顎で指しながらフライパンの中の蒸しパンを丁寧に皿へと移していく。ナナシは器用なもんだなーと思いながらクラッカーの作った蒸しパンを見ていた。

「これはあまり甘くない」
「へェ」
「だからナナシでも食えると思う」
「へェ…………え?私のために作ってくれたの?」

ナナシがそう言えばクラッカーの顔は真っ赤に染まる。

「お、お前のためなわけあるか!!こ、この本を読んでいたら、フライパンで作れるレシピが乗っていたから作ったまでで………暇だったし、そう、暇だったからだ!!断じてお前のためなんかじゃない!!断じてな!!!」
「わ、わかったよ、ごめん」
「わ、わかればいいんだ!お前はおれのために紅茶の用意でもしとけ!!」

クラッカーは蒸しパンを持ってさっさと部屋に行ってしまった。
ナナシはクラッカーの態度にムカつきながらも紅茶の用意をしてやった。

「ほらよ!」

ナナシはバンっと勢いよくテーブルの上に紅茶を置いた。
テーブルの上に置かれた紅茶は一人分でしかもナナシはテーブルから離れた場所に座り雑誌を読み始めたのでクラッカーは首を傾げる。

「…………お前の分は?」
「何が?」
「紅茶」
「紅茶好きじゃないから」
「紅茶もか!?好き嫌いの多い奴だな!」
「余計なお世話ですー」

ナナシは手をひらひらと振るだけで雑誌から目を離そうとしないし動かない。

「…………食べないのか?」

クラッカーはボソッと呟いた。ナナシはえ?と顔を上げる。

「私のために作ったんじゃないんでしょ?」
「お、お前のために作ったわけではないが……お前の分がないとは、言っていない……」

そのままクラッカーは下を向いてしまった。
ナナシは雑誌を閉じてテーブルの前に移動した。

「いいの?」

クラッカーが黙ってコクンと頷いたので、それを見てナナシは笑った。

「じゃあ、せっかくだから食べようかなー」

クラッカーはここに来てから初めてナナシの笑顔を見た。いつもムスッとしたような顔ばかり見ていたので、なんだかすごく可愛く思えて顔が熱くなってくる。でもクラッカーはすぐにハッとしてナナシを睨み付けた。

「こっち見るな!!!」
「いきなり何!?」
「ブース!!!」
「…………出ていくかクソガキ?」
「うるせェ!!さっさと食え!!」
「むぐっ!?」

クラッカーは蒸しパンを一つ掴んでナナシの口に無理矢理押し込んだ。















「あ、そうだ毛布」
「あ?」
「掛けてくれたの君だよね?」
「おれ以外にこの部屋にはいないし当たり前だろ」
「言い方ムカつく………でもありがとう」
ナナシはまた笑った。
「わ、笑ってんじゃねェよブス!!!!」
「………殴るよ?」










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クラッカー小学生かな?(笑)

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