時空を超えて愛してる | ナノ
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 01:嫌な子供

子供は噛むは暴れるはで抑えるのが大変だった。ナナシはもう疲れきっている。しかも同じアパートに住んでいる管理人さんに静かにねと注意された。
一応大人しくなった子供はベッドの上であぐらをかいていた。

「おい女!」
「…………んだよクソガキ」

ナナシは本当に可愛くない子供だと思いながら睨み付けた。子供もクソガキと言われたのが気に食わないのか睨み返す。

「………喉が渇いた」
「チッ」

ナナシは仕方ないと立ち上がり冷蔵庫を開けた。
ほらっとコップを渡してやれば、子供は黙って受け取りじっと中身を見詰めている。

「麦茶だよ」
「………紅茶がいい」
「そんなもんない」
「こ、紅茶がないだと!?」

信じられないという顔をしている子供を見て、そんなに驚く事じゃないだろうと思いながらナナシは麦茶を飲んだ。

「くそっ………おい、茶菓子は?」
「は?ったく、図々しい」

それでもナナシは何かあっただろうかとつまめる物を探してやる。これでいいかと適当に掴むとぽいっと子供に投げ渡した。
その投げられた物を見て子供は震えている。

「な、なんだこれは?」
「イカ」

ナナシが投げ渡したのはおつまみのイカだった。甘いものが好きではないナナシの部屋にはそういう物ぐらいしか置いていないのだ。

「ふ、普通甘いお菓子を出すだろ!?」
「甘いお菓子なんてない」
「はァあ!?な、なんて所におれは来てしまったんだ!!」

そう言いながらベッドを叩いている子供の事を勝手に来といて何言ってんだと思いながらナナシは見ていた。

「ねェ埃出るからやめてくれる?」
「うぅ………ミ、ミルクは?」
「え?ああ、牛乳はある」
「ホットミルク」
「…………もー!ワガママ!!」

文句を言いながらもナナシは牛乳を電子レンジで温めてやり渡した。

「はちみつは?」
「ねェよ」
「なんなんだよここは!!!」
「うるせェ!!」

もうっ!と言いながらナナシは料理に使う用の袋に入ったままの砂糖を持ってきて、ばんばんとホットミルクの中に入れた。

「し、信じられねェ」
「甘くすればいいんでしょ?」
「砂糖はちゃんとした容器に入れろよ!もし容器がないならせめておれの見えないとこで入れるべきだ!!」
「…………早く帰ってくれクソガキ」

子供は舌打ちをしてからミルクを飲み始めた。

「それ飲んだらお家帰りな。包丁振り回した事は忘れてあげるから」
「……………帰り方がわからないんだよ」
「何迷子?だから荒れてたの?」
「迷子なんて可愛い話じゃない」
「は?」
「ここはおれの知ってる世界とは違う」

子供はぼそりと呟いた。そういえばさっきも元の世界に帰せとか訳のわからん事を言っていたなと思いながらナナシは黙って話を聞いていた。

子供は目が覚めたらこの部屋に居たそうだ。誰もいないし鍵も開いたから外に出てみたら、自分のまったく知らない景色が広がっていて、見たことがない物ばかり。何かおかしいと思った子供は部屋の主の自分が何かしたのだと思い、部屋へと戻って帰ってくるのを待っていたらしい。

「意味がわからない」
「おれだってわからないんだよ!それにこの体!まるで子供だ!」
「うん、子供だね」
「おれは本当は40歳だ!」
「ふーん」
「それに海賊だ!」
「わーすごーい」
「…………馬鹿にしてるのか貴様!!」
「君は自分がそんな事言われて信じる?」
「…………くっ!」

でもナナシはそんな事を言いながらも子供の話が全部嘘ではないような気がしていた。だって見た目は4、5歳くらいの子供なのに話し方が完全に大人だから。でもとても言っている事は信じられない。ナナシは疲れているのもあり考えるのが嫌になった。

「一回休憩!」
「あ?」
「喜べ!特別に君にも肉を食べさせてやる!」

肉と聞いて子供の腹がぐぅっと鳴った。子供の顔が赤く染まる。待ってなとナナシは立ち上がり夕飯の準備を始めた。





子供はかなりお腹が空いていたようでナナシが焼いてあげた肉を口いっぱいに頬張っていた。

「あまりいい肉じゃないな」
「文句言うなら食わせないぞクソガキ」
「さっきから思っていたが………お前は口は悪いし、可愛げもないな」
「こっちの台詞だクソガキ!!」
「クラッカー」
「あ?」
「おれの名前だよ。クソガキと言われるのは気分が悪い。クラッカー様と呼べ」
「私の名前はナナシだ。ナナシ様と呼べ」
「はァあ!?なんで……」
「君の真似ですけどー?」
「チッ………クラッカーでいい」
「クラッカーね。変な名前」
「本当に可愛くない女だな!!」

クラッカーはナナシを睨み付けた。子供に睨み付けられても全然怖くないナナシは肉をまた焼き始める。

「ほら、皿出しな?」

お腹が空いているクラッカーは大人しく皿を差し出した。





食事も終わりお腹がいっぱいになったクラッカーはベッドに寝転んでこれからどうするかを考える。
でも元の世界に戻る方法がわからない今、選択肢は一つしかなかった。

「おれはここに住む事にした」
「……………はい?」

洗い物をしていたナナシの声が裏返る。

「い、いや、帰れよ!!」
「だから帰り方がわからないと言っているだろう!おれだってこんな甘いお菓子がない家なんて本当は嫌なんだよ!でも仕方ないから我慢してやる!」
「なんでそんな上から!?腹立つな!出てけクソガキ!!」

ナナシは追い出すためにクラッカーを捕まえようとするも、行くところのないクラッカーは追い出されるなんてごめんだから逃げ回るし暴れる。

しばらくぎゃーぎゃーやっていると、ピンポーンとインターホンが鳴った。ナナシはヤバイとクラッカーを捕まえるのを諦め急いで玄関へと駆け出した。

やっぱり外にいたのは管理人さんでまた注意された。ナナシは本当にすみませんと何度も頭を下げてドアを閉めた。

「おい」

いつの間にか後ろに立っていたクラッカーがナナシの服を引っ張る。

「おれはこのまま暴れるぞ」
「ふ、ふざけんな!今注意されたの見たよね!?」
「だからだ。お前がおれを追い出そうとする限り全力で暴れる。もちろん外でもな」
「そ、外でなら他人だし関係ない」
「ナナシお姉ちゃんって言いながら騒ぐ」
「君のお姉ちゃんじゃないから!」
「親戚とか友人の子供とかなんとでも言える」
「………」
「子供が外でお前の名前を叫びながら泣いたりしたら………なんと言われるだろうな?」
「クソガキ………!!」
「フフ!しばらくよろしくなナナシ」

そう言いながらニヤリと笑うクラッカーを見てナナシは本気で子供が嫌いになりそうだった。















「おれは疲れたから今日は寝る」
「おい!ベッドで寝ようとするな!小さいんだからこっちの長座布団で十分でしょ!?ほら!」
「おれはベッドじゃなきゃ寝れないんだよ」
「居候が生意気言うな!」
「…………暴れるか?」
「くっそ!さっさと寝ろクソガキ!」










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原作より5年前ってことで。99%ギャグ。

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