時空を超えて愛してる | ナノ
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -


 17:新しく作る

二人は島を軽く一周して今はこの島で一番キレイだと言われている砂浜に来ていた。

ナナシは子供達のお菓子どうぞ攻撃に疲れて少しぐったりしていた。
ボケーっと海を眺めながらナナシは口を開く。

「あんたって意外と子供に好かれてんのね」
「まあな」
「部下にもなんか慕われてるし?」
「フフ」
「……私だったらあんたみたいな上司絶対嫌だけどなー」
「なんでそうお前は余計な一言を……いや、上司か……なら構わんか」

うんうんと一人で頷いているクラッカーを見て、いつもならここで頬をつねったりしてくるはずなのに変なのと思いながらナナシはポケットからサングラスを取り出しかけた。

「持ってきてたのかそれ」
「なんか海でサングラスってバカンスに来てますーって感じするからいいかと思って」
「ふーん……昨日から思っていたが、似合ってないぞそれ」
「……マジか」
「貸してみろ。おれの方が似合う」

クラッカーはナナシのサングラスを奪ってかけた。

「どうだ?」
「あんたも似合ってないと思う」
「……返す」

サングラスを返されたナナシは似合わないと言われたらもうかける気にはなれなかったにでそのままポケットに戻した。

「ところでナナシ」
「んー?」
「この世界の海はどうだ?」
「え?あ、うん。キレイだと思う」

そう言いながらナナシは座りまた海を眺めた。クラッカーもそのまま隣に座る。

「おれの島は?」
「島?うーん……お菓子は困ったけど、初めてで面白い物も多かったし楽しかった、かな?それに皆親切だったし。まあ、親切なのはあんたと一緒だったからかもしれないけど……」
「お前一人の時だってきっと親切にする」
「それはありがたいねェ」
「……ここにいたいと思ったか?」
「え?」
「この世界に、お前はずっといたいと思ってくれたか?」

真剣な顔で自分を見詰めてくるクラッカーを見て、ナナシは今までの事をちゃんと思い出して考えてみた。

でも答えは変わらない。

「やっぱり自分の世界には帰りたい」

ナナシはクラッカーが自分のために気を遣って島を案内していた事をわかっていたので、少しだけ申し訳ないと思ったがここで嘘をついても仕方ないと思い正直に言った。

クラッカーはなんとなくナナシはそう言うだろうなと思ってはいたが、やっぱり少し凹んだ。

「……何が気に入らない?」
「え?あ、いや、気に入らないとかそういう話じゃなくて」
「じゃあなんだよ?」
「今まで生きてきた世界とは価値観が違いすぎるっていうか……」
「そんなもんすぐに慣れる」
「あんまり慣れたくないんだけどな……それにほら友達とか」
「あ?」
「少ないけどいるんだよ私にだって。それに家族も……あんまり実家には帰ってないけどさ、でも一生会えなくなるのはなんか、なんか、さ……」

寂しいとまでは言わなかったが膝を抱えて小さくなるナナシを見て、本当は戻れる方法がわかっているクラッカーは少し胸が傷んだ。
でもそれでもクラッカーは戻れる方法を教える気にはならなくて、ただナナシの頭を撫でた。

「子供じゃないのでやめてください」
「お前だって前にこうしただろうが」
「……ああ。そんな事あったね」
「………なァ」
「………何?」
「おれには姉も妹もたくさんいる」
「え?あ、そうだね。85人兄弟だもんね」
「お前と気の合う奴も一人くらいはいるだろう」

急になんの話だ?という顔でナナシはクラッカーの事を見た。

「だから新しくここで友人は作ればいい」
「ああ、そういうこと……でも家族は無理じゃん?」
「それも無理じゃないだろ」
「え?」
「………け、結婚、とか」
「………なるほどねェ」

ナナシはまだ結婚なんて考えた事もなかったが、少しは憧れていたりする。

「結婚相手に兄か弟を紹介してくれるわけ?」
「は!?紹介するわけねェだろバカ!!」

何故好きな女に兄弟を紹介しないといけないんだと思ったクラッカーは大声で叫んだ。

「おれの兄弟はお前みたいな女を嫁にしたいなんて絶対に思わない!!兄弟以外の男だってきっとそうだ!!」

ナナシはもちろん冗談のつもりで言った事なのでなんでそこまで言われなきゃいけないんだと不満そうな顔をしている。

「じゃあなんで結婚なんて言ったわけ!?意味わからん!あーあ!気分最悪!早く元の世界に帰りたーい!そんで絶対優しい恋人を見つける!」

そう言いながらナナシは砂浜に寝転んだ。戻ったら合コンだとか婚活だとか叫んでいるナナシの上に突然影が出来た。

クラッカーが覆い被さってきたのだ。ナナシは顔をしかめる。

「ちょっと……」
「元の世界にもいねェよ」
「は?」
「お前を愛してくれる奴なんて」
「待って?あんた失礼過ぎ……」
「でも!おれ、は……」

そこまで言って黙ってしまったクラッカーの顔は赤い。

ナナシは別に押さえ付けられているわけではないので、クルッと寝返りをうちクラッカーの下から這い出ると叫びながら海へと入っていってしまった。

突然のナナシの奇行をクラッカーはただ呆然と見詰めている。
ナナシは一度潜って全身海に浸かると寒いと叫びながらクラッカーの元へと戻ってきた。

「……お前何してんだ?」
「だってあんたが失礼な事言うからムカついたの!だから頭冷やすために飛び込んだ!大成功!」

少し震えながら親指を立てているナナシ。それを見てクラッカーは溜め息をついた。

「お前……くそっ空気読めよ!」
「は?空気は吸うものでしょ?」
「………はいはい、そうだな!」

クラッカーは立ち上がりマントでナナシをくるみ脇に抱えて歩きだした。

「え?これ、ちょっと?」
「また風邪なんて引かれたら困るんだよ」
「あ、ありがとう。でも自分で歩け……」
「お前は歩くのが遅い!早く帰るためだから大人しくしとけ」
「……はーい」
「まったく……人がせっかく決心して……」

まだ少し赤い顔のままぶつぶつ文句を言い続けているクラッカーを盗み見ながらナナシは急いで帰る方法を探さなければと思っていた。















「お風呂出た」
「おう。ちゃんと髪乾かせよ?」
「うん……ねェ?」
「あ?」
「本が読みたいんだけど。色々知りたいし」
「お?やっと勉強する気になったか?」
「………………………うん」
「なんだそのなっがい間は!怪しいな……」
「と、とにかく本!屋敷の案内してくれた時本がたくさんある部屋あったよね?どこだっけ?」
「髪乾かしたら案内してやるよ」
「わかった」










ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そうとう鈍感じゃなければ流石に気付くよね。

[ 戻る ]