時空を超えて愛してる | ナノ
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 15:一人が好きなので

朝食も終わりクラッカーが食後のデザートを食べている時ナナシはお茶を啜りながら少し考え事をしていた。

「……ねェ」
「あ?」
「何か仕事ない?」
「仕事?」
「そう……あ、この食器洗おっか?」
「突然どうした?」
「いや、私居候だし。このまま毎日何もしないのは悪いなーって、思ったり……」

食器を下げているメイドをチラチラと見ながら少し申し訳なさそうにしているナナシを見てクラッカーは溜め息をついた。

「別にいい」
「いや、だって……」

クラッカーは残りのデザートを一気に口に入れて立ち上がりナナシの頭をぐちゃぐちゃと撫でた。

「ちょっと!!」
「おれが先にお前の世話になってるんだから気にするな」
「でもあんただって途中からご飯作ったり……」
「だから気にするなって言っているだろう!休暇だと思ってお前はのんびりしとけよ」

そのままクラッカーはナナシの頭をポンポンと叩いた。

「いや、でも、やっぱり悪い……」
「ったく……そんなに働きたきゃ部屋の掃除でもしろ」
「部屋の掃除か……そっか、わかった」
「あ、勉強も忘れるなよ?」
「それは断る」
「だから断るな!!」





クラッカーは何かあったら来いよと言って仕事部屋に入ってしまった。
その時にナナシは無理矢理分厚い本を渡された。この世界の歴史とかが書かれているらしい。ナナシはあまりの分厚さに読む気になれなくて、寝る前に少しずつ読もうと考えながら掃除をするために部屋へと向かった。

部屋のドアを開けようとしたらちょうどメイドが出てきた。

「おっと……?」
「あ、失礼致しました。お部屋のお掃除終わりました」
「あちゃーやっぱりかー」

ナナシはいきなりやる事がなくなってしまった。
とりあえずナナシはクラッカーとの朝のやり取りをメイドに説明して明日からの掃除を断った。

「ほ、本当によろしいのですか?」
「よろしいですよ!本当暇なんでこれくらいやらせてください」
「わ、わかりました。失礼致します」

去っていくメイドの後ろ姿を見ながらナナシはこれから何をしようかなーと考えた。





クラッカーは早く片付けなければいけない仕事があったのだが、それを放置してナナシを迎えにいってしまったので少し慌てていた。遅くなると兄貴達がうるせェんだよなーと思いながら素早く手を動かしている時、部屋のドアがノックされた。

「今ちょっといい?」
「ナナシ?ああ、どうした?」

クラッカーの返事を聞いてナナシはドアの隙間から顔を出した。頭には何故かサングラスが乗っている。

「……なんだそのサングラスは?」

ナナシはふふんと笑いながら部屋へと入ってくる。

「いいでしょ?メイドさんが出してくれたんだ」
「へェ。なんでまた……」
「今日はもうメイドさんが部屋の掃除してくれたから……外に遊びに行く事にした」
「は?」
「あんたさっき休暇だと思ってのんびりしとけって言ったでしょ?」

ナナシは頭に乗せていたサングラスをかけた。

「お言葉に甘える事にした!」
「……切り替え早いなお前」
「まあね。なんかいい感じの砂浜があるらしいし、ついでに色々見てこようかなって」
「砂浜……ああ、あそこか。でも残念だが今日は無理だぞ?おれはこの仕事を片付けないと……」
「あ、一人で大丈夫なんで」
「はァあ!?」
「うわ!?何?」

クラッカーはナナシに明日島の案内をしようと思っていた。
しかも帰りたいと騒いでいるナナシにずっとここに居たいと思ってもらうためにどうすればいいかとかクラッカーなりに一生懸命考えていて、だから今一人で外出されるのは困るのだ。

「ひ、一人で大丈夫なわけないだろ!?」
「なんで?」
「な、なんでって……危ないから?」
「この島危ないの?」
「………いや」
「じゃあいいじゃん!」

クラッカーの考えなど知らないナナシはじゃ!と言ってクルリと回り部屋を出ていこうとしてしまう。クラッカーは慌てて立ち上がり腕を掴んだ。

「ちょっと何!?」
「………おれ、が」
「ん?」
「明日、案内してやるから」
「え?ああ……お構い無くー」

ナナシはクラッカーの手を振り払いスタスタと歩きだす。
クラッカーは一瞬呆気にとられたがすぐにハッとしてナナシの服を掴んでしゃがみ込んだ。

「お、お構い無く!?この流れでお構い無くとか普通言うか!?」
「一人でのんびりするのが好きだから私は言うんですー!!さらっば!!」
「ダメだ!!一人でなんて行かせねェからな!!」
「なんでだよ!はーなーせー!!」

ナナシは前に進もうと頑張るのだが、三メートルの大男に掴まれていては流石に一歩も進む事は出来なかった。

「フフフ、お前に勝ち目はない!諦めろ!!」
「くっそ!今あんた子供じゃないんだよ!?いい年したおっさんがこんな事して恥ずかしくないのか!?」
「誰も見てないから恥ずかしくない!!!」
「ちょっと誰か来て下さーい!!!」
「ひ、人を呼ぶなよ!!!」

クラッカーは勢いよくナナシを引っ張りそのまま抱き締めた。
ナナシはダメ元で少しもがいてみたが腕の中から抜け出す事はやっぱり出来なくて舌打ちをした。

「ハハハ!今のおれにお前なんかが敵うわけないだろ?」
「………ハァ。はいはい、わかった。降参」
「……っ!?」

ナナシに見上げられてクラッカーは初めて自分がナナシを抱き締めている事に気が付いた。少し顔を動かせば唇が簡単に触れてしまう距離にクラッカーは息を呑む。少しずつ顔が赤く染まっていく。

固まったまま動かないクラッカーを見てナナシは首を傾げた。

「おーい?聞いてる?降参だってば」
「う、あ…………ち、近いんだよ!!こ、こっち見んなブス!!!」

クラッカーはナナシの頭を掴んで無理矢理下を向かせた。

ナナシはこの日初めて人の顔面を殴った。














クラッカーはじんじんと傷む頬をおさえていた。
「…………普通殴るか?」
「あんたが私の事捕まえてるせいで近いのに、アホな事言うからですゥ」
「………チッ」
「てか、なんで離さないの?もう一回殴られたいの?」
クラッカーはまだナナシの事を抱き締めていた。
「……離したらお前は一人で出掛けるに決まってる」
「いや、降参って言ったでしょ?行かないよ」
「…………」
「だから行かないってば!明日案内よろしく!」
「……!フフ!まかせろ!」










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大臣って本当どんな仕事をするんだろう……。

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