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 12:もっとつてない日

クラッカーがいなくなってから数週間がたった頃。
ナナシは寝坊した。それでもなんとか電車に乗れたから遅刻は免れると思ったら、混んでいて降りる事が出来ずに結局遅刻。そして急に仕事を押し付けられてお昼も食べる事が出来ず、そのまま残業。

ナナシはなんとか仕事を終わらせて外を見れば雨が降っていた。

「あの日もたしかこんな感じだったよなー」

家に帰ったらあのクソガキがまたいたりしてなんて事を考えながらナナシは少し笑った。

ナナシは早く帰ろうと早足で駅まで向かった。そして駅の階段をそのまま早足で駆け上がった。
それがいけなかった。いつもなら問題なかっただろうが、今は雨のせいで足元が滑りやすくなっていたのだ。

だからナナシは階段の途中で足を滑らせた。





ナナシが目を覚ますと見知らぬ部屋のベッドの上にいた。自分がなんでこんな所にいるかわからないナナシはふとクラッカーの言っていた事を思い出した。

『目が覚めたらこの部屋に居た』

この言葉を思い出した瞬間一気に冷や汗が出た。そして自分の体を見てみる。子供にはなっていない。つまり大人が不法侵入した事になるわけだ。
これは不味いだろうと思ったナナシは窓へと走った。こっそり出ていこうと考えたからだったが、でもそれは無理だった。

「うっわ、高いな」

この部屋は三階だった。ナナシは大きな溜め息をつきながらその場に座り込み願った。

「あのクソガキの部屋でありますように!!!」
「クソガキとは誰の事かな?」

ナナシは大きく体を震わせながら恐る恐る声のする方へと顔を向けた。

「あー、は、はずれ」

そこにいたのはクラッカーではなかった。自分の倍以上身長がある大男だ。

「す、すみません……本当にごめんなさい。ま、間違えました」
「間違い?いったいどんな間違いだ?」
「はい、あの、すみません。とにかく本当にすみません。すぐ出ていきますから、本当にごめんなさい」

ナナシは立ち上がってそろりそろりと部屋を出ていこうとしたのだが、やっぱりそれが許される事はなかった。

「ひっ!?」

ナナシの体にはドロドロした物がまとわりついてきた。そのドロドロに首から下全部が覆われて動くことが出来なくなった。

「さァ、尋問タイムだ。ペロリン♪」
「や、やだ!何これ!?なんか甘い!?」
「クククク、キャンディだぜ」
「う、うえェェェ!!なんで私の好きじゃない甘いものに拘束されないといけないのォォォ!!せめてロープとかにしてもらえませんか!!?」
「あ、甘いものが好きじゃない!?しょ、正気か!?」
「え?あ、れ?その言葉どこかで………あ!」

前にクラッカーもこんな事を言っていたと思い出したナナシは一か八かで叫んでみた。

「ク、クラッカーって子ご存知ありませんか!?」

ナナシのその言葉に男はピクリと反応する。

「わ、私ナナシと申しまして、前にちょっとだけその子を居候させた事があるんです!知ってたらちょっとお話させてもらえませんか!?怪しい者じゃないって証明してもらえると思うんで!!」

男は何か考えている様子だった。それを見たナナシは目の前にいる男はクラッカーを知っていると確信した。

「えっと、えっと、85人兄弟なんですよね?あの子はたしか10男で………あーダメだ!兄弟の名前全然覚えてない!えー、あー、あ!末っ子はたしか3歳で、ぬいぐるみを切るのが好きなお茶目な子なんですよね!?あと、は……」

ナナシはクラッカーの知り合いだと証明するために一生懸命聞いた事を思い出して男に話した。

その話を聞いた男は少し待てと言って部屋を出ていってしまった。





しばらくすると男は手にカタツムリのような物を持って戻ってきた。そしてそのカタツムリについている受話器のような物をナナシの口の前まで持ってくる。
ナナシがなんなんだと首を傾げているとカタツムリの口が開いた。

「ナナシ?」
「あ、え!?は!?カ、カタツムリがしゃべった!?」
「その声………ほ、本当にナナシなのか!?」
「え?は?ナナシですけど……ど、どちら様で?」
「そうか!ハハハ!クラッカーだ!」
「え?いや、ん?こ、声が低いけど!?」
「本当は40だと言っただろう?」
「えー嘘……ほ、本当にあのクソガキなの?」
「また、お前は……そうだよあのクソガキだよ!」
「違和感……この声やだなー」
「ハハハ!相変わらず可愛くないなお前は!」
「………本当にお前の知り合いなんだな?」

クラッカーの嬉しそうな声を聞いて今まで黙っていた男が口を開いた。

「ああ!おれの知ってるナナシだったよペロス兄!」

クラッカーのその言葉を聞くとペロスペローはキャンディの拘束を解いた。ナナシはほっと胸を撫で下ろしながらありがとうございますと頭を下げる。

「本当に弟の知り合いだったとはな………すまない。ペロリン♪」
「い、いえ!勝手に部屋に入った私が悪いので!本当にすみませんでした!!連絡をしてくれてありがとうございます!………ところで、電話なんですかこれ?」

ナナシはカタツムリのような物をつんつんと突っつく。

「電伝虫だ」
「不思議……あ、そうだ!帰り方教えてよ!」

ナナシは電伝虫に向かって話し掛けた。クラッカーは黙ったまま返事をしない。

「おーい?もっしもーし?」
「………お、おれも知らない」
「おい、こらクソガキ、その間はなんだ?」
「いや、ほ、本当に知らないんだ!気付いたら帰っていたからな!!」
「えー……嘘でしょ。ど、どうしよう」
「安心しろ!借りは返す!」
「お金貸してくれるの?」
「違う!おれの所でちゃんと死ぬまで世話してやるよ!」
「いや、死ぬ前に帰るから……お金だけ少し貸してくれない?住み込みで働ける場所でも探し………」
「明日迎えに行くからな!!ペロス兄今日一日そいつを頼む!!」
「え?あ、ああ」
「ちょっと!?話を……」

ナナシの言葉は無視され電伝虫は勢いよく切られた。
今日は今までで一番ついてない日になったなと思いながらナナシは小さく溜め息をついた。















「あの、今日一日お世話になります」
「ああ……ところで歳は?」
「え?」
「若く見えるが……40歳のクラッカーの事をクソガキと言っていたから」
「あ、えっと……」
「いや、女性に歳を聞くなんて失礼だったな!悪かった。ペロリン♪」
「あ、あはははは」
ナナシは説明するのが面倒だったので笑って誤魔化した。











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今度はトリーップ!

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