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 11:目が覚めると

クラッカーは暗闇の中にいた。
そうだ前に見た夢はこれだったと思いながらクラッカーは辺りを見回す。やっぱり真っ暗で何も見えない。
この前は兄さんと呼ぶ声が聞こえたなと思いながらクラッカーは耳をすませながら少し歩く。

「クラッカー兄さん!!」

声が聞こえる方へとクラッカーは慌てて走り出した。





クラッカーが目を開けると泣いているガレットの顔が目に映る。

「兄さん!!」

ガレットは勢いよくクラッカーに抱き付いた。ペロスペローも側にいてよかったなんて言っているし、ズキズキと痛む頭を押さえながらクラッカーは何があったのか考える。
ぼーっとしているクラッカーを見てペロスペローは口を開いた。

「大丈夫か?お前階段から落ちて一週間以上眠ってたんだぜ。ペロリン♪」
「階段………ああ、そうだ、そうだった」

ホールケーキ城でお茶会があった日。クラッカーはガレットと一緒に城の中を歩いていた。
その時ガレットが階段を踏み外したのだ。クラッカーは咄嗟に腕を掴んだのだが、二人はそのまま落ちてしまった。
クラッカーはガレットを庇いながら落ちたので受け身が取れず運悪く頭をぶつけてしまい今までずっと意識が戻らなかったのだ。

クラッカーは泣いているガレットの頭を撫でた。

「ケガはなかったか?」
「兄さんが庇ってくれたから無傷よ!ごめんなさい兄さん……ありがとう」
「いいんだよ………そうか、そう、だよな。あんな事夢に決まってる」
「え?何か言った兄さん?」
「いや、何も」
「そう………あ!私医者を呼んでくるわ!」
「じゃあおれは他の兄弟達に連絡してくるよ。ペロリン♪」

そう言いながらガレットとペロスペローは部屋を出ていった。

一人残されたクラッカーはぼーっと今までのナナシと過ごした日々の事を考えていた。

「頭を打ったせいなのか、酷い夢だったな」

自分の今いる世界とは全然違う所だったし、我慢ばかりさせられた。クラッカーからしたらとても快適だとは言えない生活だった。
それにナナシの性格だ。口は悪いし、全く可愛げがなかったし、おまけに甘いお菓子が嫌いだなんて本当にどうかしていると思った。

「あんな世界ありえないよな。しかもあんなに可愛くなくてお菓子が嫌いな女、現実にいるわけがない」

でも、クラッカーの頭の中には笑顔のナナシの顔がハッキリと浮かんで離れなかった。

「夢でよかった……あんな女に惹かれるなんて最低だよ」

いや、でも自分の見た夢だからこそ、あれが本当の自分の好みということなのか?と思ったクラッカーは自嘲気味に笑った。

「趣味が悪いなおれは………」

そう言ってクラッカーは目を瞑った。もしかしたらまたナナシが出てくる夢が見れるかもしれないと思ったから……それに風邪がちゃんと治ってるのか心配だったから。















ナナシが目を覚ますと隣にクラッカーはいなかった。服だけがそのまま残されていて、ナナシはきっと元の世界に帰ったんだなーとなんとなく思った。

「ありがとう位言っていけよなクソガキ」

ナナシはまだ少しだけ温かさの残るクラッカーが寝ていた場所を叩いた。










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戻っちゃった。

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