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 05:最後の一つ

ナナシは用意してもらったアイスティーをカタクリの隣に座って飲んでいた。そして用意されたお茶菓子のクッキーを口に放り投げる。今まで食べたクッキーの中で一番美味しいと思ったナナシは笑顔でカタクリを見上げた。

「クッキーすごく美味しいです!」
「そうか。口に合ってよかった」
「カタクリ様は食べないんですか?」
「食べている」
「え?そのままで?」

ナナシは首を傾げる。だってカタクリは口を隠したままだったから。

「…………おれは食事する姿を人には見せない」
「へー」
「…………気になるか?」
「そりゃあ、気になりますよ!でもカタクリ様がそうしたいなら別にそれでいいです!!」

ナナシはそう言って笑い、またクッキーを食べ始める。カタクリはその言葉にほっと胸を撫で下ろした。

「あ!一つ聞きたい事がありました!」
「なんだ?」
「カタクリ様の予知能力!!」
「ああ、見聞色の覇気か」
「けんぶんしょく?」

カタクリはナナシに見聞色の覇気について説明してやった。その話を聞いているナナシの顔がどんどん輝いていく。
ナナシは立ち上がりぐいっとカタクリに顔を近付けた。あまりの近さにカタクリは少し顔を赤くしてすっと自分の顔を片手で隠す。

「ち、近くないか?」
「あ、ごめんなさーい。興奮しちゃって!」

エヘヘと笑いながらナナシは一歩下がった。

「つまりそれって!私も頑張れば使えるようになると!?」
「まあ、そうだな」
「わー!教えて下さい!!」
「……………何故だ?」

カタクリは顔をしかめた。
これからは自分が守るから強くなる必要なんて全くないし、それにナナシが怪我をしたりするのが嫌だと思ったから。

「え?何故?」
「強くなりたい理由だ」
「強くなりたいっていうか…………見聞色の覇気が使えたら、じゃんけん無敵じゃないですか!!」

ナナシが見聞色の覇気を使いたい理由はとてもくだらない事だった。カタクリはその理由に安心したのだが少し呆れもした。

「じゃんけんってお前………」
「だっておやつの最後の一個ってじゃんけんじゃないですか!?」
「そうだったのか?」
「はい!」

ナナシはおやつを食べる時はいつも誰かと一緒だった。父だったり兄だったりメイドだったり、町で誰かの家だったり。
そしてケーキとか一人一つある物以外は必ず最後の一つをじゃんけんで勝った者が食べると決めていた。それがナナシは楽しかった。

「そんな事しなくてもここでは好きなだけ食べて構わないが………」
「もーカタクリ様!じゃんけんで勝って手に入れた最後の一個が美味しいんですよ!?」
「………そういうものか?」
「そういうものです!…………あ、じゃあ、やっぱり覇気使っちゃうとつまらないか。私覇気は教えてもらわなくていいでーす!」
「そうか」

ふふんと楽しそうにナナシは再び座ってアイスティーに口をつける。

「カタクリ様!このクッキーも最後の一枚になったら勝負ですよ!」
「お前にやるが………」
「だーから!!」
「………わかった」





そしてクッキーが最後の一つになった時ナナシは顔をキラキラと輝かせてカタクリを見る。

「じゃんけんか?」
「はい!!」

ナナシは腕をブンブンと振り回しながら何を出そうかなーと楽しそうに悩んでいる。

「あ、は、覇気は禁止ですよ?」
「わかっている」
「よーし!じゃあ、いきますよー!?じゃーんけーん、ぽん!!」

ナナシが出したのはグーでカタクリはチョキだった。やったー!!とナナシは大きな声で言いながら立ち上がった。

実はカタクリ覇気を使っていた。ナナシにわざと負けるためにだ。じゃんけんに勝っただけでこんなに嬉しそうにしてるならこれからもわざと負けてやろうとカタクリは思った。

「へへ、最後の一つゲットー!いただきますカタクリ様!」
「ああ」

ナナシはあーんとクッキーを口に入れようとしたのだがやめた。
そのまま少しクッキーを見詰めてから、半分に割ってそれをカタクリに差し出す。

「どうした?」
「へへ、やっぱり半分こにしましょ!」
「…………いいのか?」

笑顔で頷くナナシからカタクリはクッキーを受け取った。
美味しいですねー!と言いながら笑顔でクッキーを食べているナナシを見て、やっぱり悪くないとカタクリは思いながら自分もクッキーを口に入れた。















「カタクリ様は小さい頃とかおやつが最後の一つになったらどうしてましたか?」
「勝った奴の物だったな」
「やっぱりじゃんけんですか?」
「いや、取っ組み合いの喧嘩だった」
「ワォ!バイオレンス!」










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シャーロット家のおやつをかけた兄弟喧嘩はヤバそう(笑)

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