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 02:この国が好きだから

ナナシに案内され島を一通り見て回ったカタクリは船へと戻ってきた。

「おかえりなさいませカタクリ様!」
「ああ」
「フルーツの味はどうでしたか?」
「噂以上だ。ママもきっと満足するだろう。町に入ってすぐの店にフルーツを用意させてある」
「承知いたしました!」
「ちゃんと言われた金額を払うように」
「え?わ、わかりました」

カタクリは船へと乗り込んだ。

もうすぐ3時なので部下におやつを部屋に運ぶよう指示を出してからカタクリはナナシの事を考えていた。
ナナシは今まで見てきた女の中で一番美しかったが、お転婆っぷりも今まで見てきた中で一番だった。もちろん女兄弟を含めてもだ。
突然木に登って果物を投げて寄越してきたり、秘密ですよ!と言いながら畑の物を勝手に取ったりするなど……とても一国の姫がするような行動ではなかった。でもカタクリはそれを悪くないと思っていた。

「さて………ママになんて報告するか」





それから一週間ほどたった頃。ナナシの国にビッグ・マムから一通の手紙が届いた。

美味しいフルーツをこれから毎月買ってやる。そして美しいと評判のお前の娘を嫁に寄越せ。

手紙には短くこう書かれていた。

父や兄の方はナナシと違い世の中の事はちゃんと知っている。だからこれを見た父は頭を抱えた。兄の方は手紙の最後に書かれていた番号に急いで電伝虫を掛ける。

すぐにガチャッと誰かが電伝虫に出た。

「おい!この手紙はどういう事だ!?」
「んー?………おお!やっと手紙が着いたかい!」

電伝虫に出たのはビッグ・マム本人だった。

「実にうまいフルーツだった!最高だったよォ!」
「この手紙はどういう事だと聞いている」
「まったくせっかちだねェ……そのままの意味さ」

大声で笑うビッグ・マムに兄は苛立ちを覚えた。

「フルーツはいくらでも売ってやる。だが、妹を嫁には………」
「拒否権なんかねェからな?」

一週間後に迎えをやると言ってビッグ・マムは電伝虫を切った。兄は受話器を勢いよく床に叩き付ける。

「くそッ!」

父はゆっくりと立ち上がった。

「ナナシを国から逃がす準備を」

兄は黙って頷いた。
普通だったら国のために娘を嫁に出すだろう。だって相手はあの四皇のビッグ・マムなのだから、いくら強い兵や武器があってもこの国にはきっと勝ち目はない。でも、ナナシを犠牲にしてまで助かろうとは思わないのだ。

「国の者達にも逃げるようにと伝えてくれ。皆も今までよくこの国のために働いてくれた。これからは別の国で………」
「国王様!!」

一人の兵士が声を上げた。そして跪く。他の兵士達も全員だ。

「この国のために戦わせてください!」
「勝てぬとわかっている戦いなどする必要はない」
「国王様とこの国を守るのが我らの役目です!!」





珍しく庭で読書をしているナナシの元にはメイドが一人やって来た。そのメイドは今にも泣き出してしまいそうな顔をしていて、どうしたのか聞いても答えることはなかった。お出掛けの準備をしましょうと言い続けるだけだ。突然理由も話さすに出掛けると言ってくることは今までなかった。
なんだか嫌な予感がしてナナシは走り出し父のいる部屋へと向かった。

「お父様………!」
「ナナシ」
「と、突然出掛ける、なんて………」

ナナシは部屋の異様な雰囲気を察した。
父や兄の険しい顔に緊張した様子の兵士や目に涙を浮かべているメイド。

「………せ、戦争?」
「お前が気にすることじゃない」
「き、気にする!わ、私どこにも行かない!行かないから!!」
「最後くらい言う事を聞けないのかお前は!!」

言う事を聞かないナナシについ怒鳴ってしまってから兄は口を押さえた。

「最後?お兄様最後って何?ねェお父様?」

父は溜め息をついてから手紙の事を話した。





すべて聞き終わったナナシは大きな声で笑い出した。兵士もメイドも驚いた顔でナナシを見詰める。

「もーそんな事でこんな雰囲気になってたのかー!びっくりしたなー!」

ナナシは父の前に立ってにっこりと笑った。

「私この国のためなら喜んで結婚します」
「ば、馬鹿な事を言うな!!」

ナナシの言葉を聞いて兄は叫んだ。だって海賊に嫁に行くなど幸せになれるはずがないから。
ナナシは兄の事をきっと睨み付けた。

「それは私の台詞!命を無駄にしないで!」
「でも、お前が………」
「私はこの国が大好きなの!だからいいの!」
「…………本当にいいのか?」

今まで黙って聞いていた父が少し悲しそうな顔をしながら言った。

「もちろん!この国が幸せだったら、私は幸せ!」
「…………すまない」

父は泣いた。それを見ていた兵士やメイドも皆。



そして一週間後ビッグ・マムの部下がナナシ達を迎えに来た。
国の者達は皆泣いていた。でもナナシは大丈夫だからと、涙を見せずに笑顔で皆に手を振り続けていた。島が見えなくなるまでずっと………。





ナナシは用意された部屋の椅子に縛り付けられていた。兄の手によってだ。

「わ、私逃げないけど?」
「それはわかっている………今から島に着くまでの一週間でお前を立派な姫にする」
「はい!?」
「お前が何か粗相をして国が滅ぶなんて事になったら困るんだ」
「………えェェ」
「国のためなら頑張れるんだろう?」
「そ、そうだけど………なんか、えっと、あれェ?」
「口の利き方食べ方歩き方………全部しっかり覚えてもらう」
「嘘じゃん」
「…………国のためなら?」
「が、頑張ります」

ナナシは一週間みっちり兄にマナーを叩き込まれたのだった。










「一口がデカイ!」
「ご、ご飯くらい好きに食べさせてー!うぅ、お、お父様ー」
「すまんなナナシ………嫁ぐからにはちゃんとしないと、ほらな?」
「う、うわーん!」
「…………嫁に行くのやめるか?」
「それは絶対にやめない!!!!!」





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すみません。スピーディーにお届けします。

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